隣接面齲蝕
歯と歯の間の面の虫歯、専門用語で言うと、隣接面(りんせつめん)の齲蝕(うしょく:虫歯)は、かなりの頻度で起こります。歯と歯の間に虫歯が少しだけ見えていたり、まだ外に向けての穴があいていないので、目視では、わずかな変色にしか見えなかったり、レントゲン写真でしか見つからないこともあります。
そんな虫歯を治療する時に、セパレーターを使って歯と歯のすき間をあける、つまり歯間離開(しかんりかい)させてから行えば、虫歯以外の部分をほとんど削ることなく、非常に簡単な治療ですませることができます。
右がセパレーターで、直径3~5ミリほどの、ゴム製のリングです。従来からの青いリングに加えて、透明のリングも使えるようになりました。
模式図での解説
歯と歯の間に少しだけ見えていたり、変色等でしか分からない隣接面の虫歯は、比較的多く見かけます。 | |
そういった、虫歯の入り口が外からは充分に見えていない場合に、セパレーターをかけます。 | |
1週間ほどすると、1ミリほど歯間離開し、 |
|
隣の歯を傷つけないような小さなドリルで、 |
|
レジンという合成樹脂をつめやすいように、 |
|
その歯に近い色のレジンをつめて、出来上がりです( |
もしもセパレーターを使わなければ……
もしもセパレーターで歯間離開をしていなければ、 |
|
また、道具を入れるためにも、視野をよくするためにも、 |
|
大きく削った場合は、当然のことながら、 |
|
そういったレジン本体の弱さやはずれやすさを避けるために、 |
②透明のセパレーターをかけます。
③1週間ほどで隣接面が少し開き、歯間乳頭も押し下げられて、治療しやすくなっています。
↓↓↓↓
①虫歯と変色部分が見えています。
②虫歯を削り、変色もできるだけ目立たなくします。歯と歯の間に余裕があるので、削るのは必要最小限ですみます。
③レジンという合成樹脂で埋めます。
↓↓↓↓
①隣接面を拡げたことで、隣の歯にも、小さな虫歯が見つかりました。
②虫歯を削ります。必要最小限ですみました。
③レジンで埋めれば、ほとんど目立たなくなりました。
④治療が終了したところです。
⑤数日たてば、隙間は自然に閉じてきます。
実際のセパレーター症例2 (まだ透明セパレーターがなかった頃の症例)
①正面からは虫歯は見えませんが、裏側から見ると変色があり、隣接面に虫歯があることが確認できました。
②セパレーターをかけます。(以前は青のセパレーターしかありませんでしたが、今は前歯には、透明のものを使います)
③セパレーターの色を隠すために、歯と同じ色の合成樹脂で、表面を覆います。(透明のものは、そのままでもOKです)
④1週間ほどたつと、1ミリほど、歯間離開してきます。
↓↓↓↓
①斜めから見ると、隣接面に、虫歯の入口が見えました。非常に小さくて見えにくいので、赤丸の部分を拡大しました。
②虫歯の部分を、ていねいに削って、レジンをつめやすいように形を整えます。
③この歯に近い色のレジンを、虫歯につめます。歯間離開によって、充分なスペースがあるので、治療がしやすく、なめらかな表面に仕上げることができます。
④治療後の状態。1~2日で、隙間は自然に閉じます。つめたレジンは、歯と歯の間に隠れて、見えなくなってしまいます。
セパレーターを使えば、隣接面齲蝕を、すいぶん楽に治療することができます。もともとの虫歯が大きくて、インレ-にならざるを得ないようなケースでも、セパレーターで歯間離開しておけば、削る量はかなり少なくでき、麻酔が要らない可能性も高まるし、あとあとしみることも少なくてすみます。
私ども森本歯科医院では、3、4歳のお子様から、70代のお年寄りにまで、セパレーターは、非常によく使っています。10歳以下のお子様ならば、歯の周囲の組織に柔軟性があるので、ほとんど違和感はありません。しかし、歯にある程度の力をかけるわけですから、年齢が上がると共に、違和感や痛みを感じることが多くなり、30歳を越えると、ある程度の違和感を数日間、感じるようになり、60歳を超えると、1週間近く、違和感や弱い痛みがあるようです。しかし、痛み止めが必要なほどの痛みは、あまり経験したことがありません。
2000年にFDI(国際歯科連盟)が、『ミニマルインターベンション(最小の侵襲)』ということを提唱し始めましたが、森本歯科ではもっと以前から、典型的な『ミニマルインターベンション』であるセパレーターを使っての治療を行ってきました。また、再植による歯根端切除や、インプラントを使わずに、コーヌスでなんとか患者様のご満足をいただこうとすることも、ミニマルインターベンションの一つだろうと思っています。 なお、『ミニマルインターベンション』という言葉は、2000年にFDI(国際歯科連盟)が提唱した新しい概念ですが、似たような言葉に、『ミニマムインターベンション』があります。これは、ジーシーという日本の歯科材料メーカーが、FDIの概念に、自分の会社の主張も込めて、使っている用語であるようです。