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歯科難症例治療システムとしてのコーヌステレスコープ 概略編

 『歯がガタガタ・グラグラで、充分に噛めない……』と来院される患者様はどなたも、『できるだけ歯を抜かずに、よく噛めるようにしてほしい。できれば見た目も良くして、長く使える方法で治療してほしい』というお望みをお持ちです。

 一般的に行われている歯科治療技術では、これらのすべてを満たすことは困難ですが、『コーヌス テレスコープ システム』という考え方・治療手順で行えば、かなり弱っている歯でも使うことができ、これらすべてのご要望を満たすことが可能です。
 他院様で『かなりの本数、あるいはすべての歯を抜かなければならない』と診断されて私ども森本歯科医院にご来院いただいた患者様でも、1本も歯を抜くことなくコーヌス テレスコープ義歯を装着させていただいて、一通りの治療を終了させていただき、定期的なリコールやメンテナンスへと移行させていただいたあと、10年、20年、さらにそれ以上と、快適にお使いいただいている症例がたくさんございます。
 もちろん、非常に悪い歯はお抜きする場合がありますが、コーヌス症例全体で申し上げれば、抜歯になる歯の数は、せいぜい2~3%程度でしかありません。

 一般的に、歯科関係者のあいだでは、『良い入れ歯を作るために、弱った歯をあらかじめ抜いておく』という考え方が多いようですが、私ども森本歯科医院が提唱いたしております『システムとしてのコーヌス テレスコープ』なら、『かなり弱った歯でもとりあえず使っておいて、その歯の寿命がくれば勝手に抜けてくれる』という考え方で進めていけますので、最初の治療時にはあまり歯を抜かないで使うことができます。

 また、多くの患者様が、『治療中、どのように食事ができるのか』ということを心配なさいますが、システムとしてのコーヌステレスコープなら合理的な仮クラウン・仮義歯を作っていくことができますので、かなり早期に、食事ができるようにお口の中を改善できます。また、治療が進んでいくにしたがって、どんどん状態を良くしていくことができ、患者様ご自身にも、それを実感していただくことができます。

コーヌス テレスコープの最大の利点 ・・・ 非常に広い守備範囲

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(?は、対応が困難、または状況によっては対応できないと思われることを表しています)

 上の図のように、コーヌスの最大の特徴は、『幅広い守備範囲』にあります。

 他の方法では考えることのできない『補綴前処置(ほてつぜんしょち:義歯等の装置を入れる前の事前処置)(青で点滅している部分)』『補綴後処置(ほてつこうしょち:義歯等の装置を入れた後の、長期にわたる修理等の事後処置)(緑で点滅している部分)』を完全にカバーすることができます。

 つまり、義歯やブリッジを作る前に、残っている歯をいかにして保護し、強化しておくかといった補綴前処置において、コーヌスはさまざまな処置を講じることができますし、義歯やブリッジを作ったあと、どのように永く使い続けることができるのかといった補綴後処置にも、コーヌスは修理・追加・総義歯化といったさまざまなメンテナンス手法が使えますので、最も有効な方法だと考えております。
 ただ、よほどコーヌスに詳しい歯科医師でなければ、こういった補綴前処置や補綴後処置が充分にできる利点に気づいておらず、ほとんどすべての歯科医師は、赤の点滅の『補綴処置』の範囲内だけの視点で、『どの方法が良いのか』といった議論に終始しているのが現状だと思っております。 (大学の『補綴科』の先生でも、補綴の専門家であるがゆえに、『補綴処置』のみを議論されることが多く、他の科の領域に口を出すかのような『補綴前処置』については、ほとんど発言されることがないようです)

 もしも『補綴処置』のみの範囲で考えるなら、私もコーヌス以外の方法でも良いのかもしれないと思っております。『クラスプ義歯』や『ノンクラスプ義歯』はお手軽だし、歯をあまり削らずに済むといった利点もあります。『インプラント』は『動かない』という点では、非常に優れていると言えます。また、『冠外アタッチメント』や『磁性アタッチメント』『パラレルテレスコープ』『リーゲルテレスコープ』もそれなりに良い面はあります。

 しかし、入れ歯が必要な患者様は、『残っている歯のすべてが充分に丈夫』などということはあり得ず、『残っている歯もかなりガタが来ている』といったことがほとんどです。
 これが現実である以上、『補綴前処置』とひとくくりにされる歯内療法や歯周治療、さらには咬み合わせの回復といったことをキチッと行ってから補綴処置に移行する必要があるのですが、残念ながらコーヌス以外には、『補綴前処置』と『補綴処置』を一つの流れの中で扱うノウハウは開発されていないと言っていいと思います。

 また、超高齢化社会を迎えた今、患者様の肉体的な衰えや老健施設等での対応のしやすさも考えておかなければなりません。
 『いかにして肉体的な負担や労力をかけずに、無難に安定的に老後を過ごしていただくか』を考えたとき、コーヌスのもっている『さまざまな補綴後処置が可能』といった特徴は、非常に有利になってまいります。
 以上のことから、『補綴前処置』『補綴処置』『補綴後処置』のすべてを一つの流れの中で扱うことができるコーヌスが、他の方法よりも優れていると申し上げて良いと思っております。

 また、グラグラの歯でも残しておくことの意味は非常に大きいものがあって、下の図のように、『噛んでいることの感覚』は、歯根膜(しこんまく:歯の根と骨とをつなげている組織)が非常に鋭敏に感じ取れるので、できるだけ歯を抜かないでおくことが重要であることが科学的にも立証されています。
 粘膜に噛む力をかけても、歯根膜の1/20しか噛む力を感じることができず、インプラントを想定した顎骨は、1/5しか噛む力を感じることができないとされています。
 歯の数が少なくなって、粘膜に力をかけている義歯やインプラントで『よく噛めない』と患者様がよくおっしゃるのは、こういった噛む力の感覚をうまく利用できないことも一つの原因かと思われます。

 コーヌスなら、かなりぐらついている歯でも利用することができますので、その歯の持っている歯根膜感覚を充分に活かすことができ、『噛めている』という感覚を持っていただきやすい方法であることは、こういった科学的な研究からも裏付けられていると思われます。

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大阪歯科大学主任教授 田中昌博先生の講演より引用

 ※田中昌博先生の講演は、ここをクリックして下さい。 ⑤の『大阪歯科大学同窓会様ポストグラデュエートコース講演会』のビデオダイジェストから、ご覧いただけます。

歯科の難症例治療システムとしてのコーヌス テレスコープの概説

 コーヌス テレスコープをシステムとしてとらえる考え方は、『歯がガタガタ・グラグラで、充分に噛めない』といった患者様に、非常に有効です。
たくさんの歯が悪い患者様、不適合な部分義歯によって歯が動揺してきてうまく噛めない患者様、歯周病で全体的にグラグラになっている患者様など、お口の中を総合的に治療しなければならない患者様に対しては、

  1. グラグラ・ガタガタの歯をできるだけ歯を抜かずに、いかにして早期に安定させるのか
  2. ある程度安定した状態をさらに改善させ、治療期間中、いかにしてそれを維持していくのか
  3. いかに安定的によく噛めるように仕上げるのか
  4. いかに長期にわたって安定的な状態を保ち、老化による衰えや経時的変化等に対処していくのか

といったさまざまな難しい条件をクリアしなければなりませんが、『システムとしてのコーヌス テレスコープ』という考え方・手法で治療させていただければそれが可能であると、私ども森本歯科医院では考えております。

 システムとしてのコーヌステレスコープの中核的な技術は、『コーヌス テック』です。これは、『コーヌスタイプの仮クラウン・仮義歯』という意味で、着脱式(あるいは可撤式とも言います)の仮歯・仮義歯のことを指します。
 この着脱式・可撤式のコーヌステック、すなわち、患者様によって自由に取りはずしが可能な仮歯・仮義歯を用いることにより、さまざまな好結果を得ることができます。
 システムとしてのコーヌステレスコープの概略的な考え方は、

  1. コーヌス テック(コーヌス タイプの着脱式・可撤式の仮歯・仮義歯)の作製
  2. 完成義歯としてのコーヌス テレスコープ義歯の作製・装着
  3. 義歯装着後の長期メンテナンス

の3つの要素から成りたっています。
 すなわち、

  1. 仮歯であるコーヌス テックで、かなり悪い状態から良い状態へとできるだけ早期に改善して、完成した状態であるコーヌス テレスコープ義歯へと結びつけ、
  2. コーヌス テレスコープ義歯の完成・装着後は、安定した快適な状態を長期間にわたって維持していただき、
  3. 長期間の使用後、老化等でどこかが悪くなってきても、優れたメンテナンス性で修理をしてさらに使い続けていただき、最終的には総義歯に改造して、そのまま使い続けていただくことができる。

といったことが歯科難症例治療システムとしての流れになりますが、②完成義歯としてのコーヌス テレスコープ義歯、③義歯装着後の長期メンテナンス、については、他のページでもご説明させていただいておりますので、このページでは主として①の、システムとしての考え方の最重要部分である『完成義歯の装着に至るまでの、歯をできるだけ抜かないで済ませる治療方法』を中心に解説させていただきます。

 このシステムとしての考え方の中核となるコーヌス テック(コーヌス タイプの着脱式の仮クラウン・仮義歯)の技術こそが、歯をできるだけ抜かないで済ませ、治療期間中にお口の状態を確実に改善してゆき、より良い状態で完成義歯であるコーヌス テレスコープ義歯へと結びつけることを可能にしております。

 もう少し具体的に申し上げれば、

  1. 動揺していたり、かなり悪化していたりする歯に対して、まず数本ずつの合成樹脂の仮クラウンを装着することで、安定化を図りながら噛みやすいようにし、
  2. その数本単位の仮クラウンをどんどん増やしてそれらを連結し、コーヌステック(着脱可能なお口全体の仮歯・仮義歯)へと改造していくことでお口の中の状態をさらに改善していって、より安定的でよく噛める状態を作り出していき、
  3. それがそのまま、完成義歯であるコーヌステレスコープ義歯へのプロトタイプ(原型)となり、
  4. そのプロトタイプを実際に使っていただいた患者様のご感想やご要望を、完成義歯であるコーヌス テレスコープ義歯に反映でき、
  5. 治療期間が長くなっても、歯周病を悪化させることなく、かなり効果的に改善させることができます。

コーヌステックの模式図での解説

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 歯周病や不適合な義歯、あるいは悪い部分を放置しておくと、咬合力(こうごうりょく:噛む力)によって、歯が動揺してきたりして安定した部分がなくなり、どこから手をつけていいのか分からない状態になることがあります。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 痛い部分、動揺の激しい部分、急ぐ必要がある部分等を中心に、まず仮クラウン(テック)を作ることを目指して、根管治療等の処置を開始します。(緑の点滅丸印の部分) 難症例の場合、どの順序で行えば合理的に安定化を図れるのかを充分に考えることが、非常に重要です。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 できるだけ早期に、根管充填・支台築造(コア)を行って、仮クラウン(テック)を作れる状態を整えていきます。しかし根管充填・支台築造まで行うにはそれぞれの歯について数回の治療が必要で、それまで待っていられないことが多く、根管充填の前に仮の支台築造を行って、仮クラウン(テック)をお作りする場合がかなり多くあります。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 部分的に仮クラウン(テック)の入った状態です。この程度の本数で着脱式にすれば不安定で、壊れたり飲み込まれたりするおそれがありますので、仮着材で仮固定します。仮固定は歯周病的にはマイナスですが、他の部分の準備ができるまでは止むを得ません。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 『個々の歯よりも、まず全体の安定を』という考えのもと、他の部分も同じように、仮クラウン(テック)を作っていきます。このことだけでもかなりの安定化が図れますが、さらなる安定のために、できるだけ早期の着脱式・可撤式のコーヌステックを目ざします。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 ある程度、仮クラウンの本数が多くなった時点で、部分ごとにお作りした仮クラウン群を連結して、着脱式・可撤式のコーヌステックに改造し、さらなる安定化を図ります。一日に数回はずして、歯磨きやコーヌステックの掃除をしていただくことで、歯周病が劇的に改善し始めます。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 これまでお使いになっていた旧義歯があれば、それも仮クラウン群と連結し、コーヌステックとして一体化してご使用いただきます。
 この時点でもはや、噛み合わせの力によって個々の歯が傷められることはなくなっています。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 もしも旧義歯がない場合でも、噛み合わせが不安定であったり噛みにくいとおっしゃる場合には、仮義歯を部分的にお作りし、コーヌステックと連結して、さらなる安定化を図ることもあります。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 コーヌステックの一通りの完成です。個々の歯に無理な力がかからなくなっていることに加えて、着脱式であるがゆえにお口の中の清潔さが格段に向上し、歯周病が劇的に良くなっていることで、ほとんどの歯の動揺はかなり落ち着いてきます。
 仕上げに向けて状態を観察したり、ご感想や問題点をお伺いしながら、やり残してあった根管治療や根管充填、支台築造などを順次進めてまいります。

大阪市平野区 森本歯科医院画像 禁複写 コーヌステックをはずせば、このようなシンプルな状態となっています。歯石等を除去する器具をさまざまな方向からアプローチすることができ、歯磨きがしやすいこととも相まって、徹底した歯周病の治療を行うことができます。

 

できるだけ歯を抜かず、歯を温存するためのコーヌス テレスコープシステム

 このようにして、まず弱っている歯を徹底的に保護してあげることによって、かなり多くの歯は抜かずに済ませることができます。しかし、もしもこの時点になっても動揺が激しかったりする歯は、残念ながら抜歯することになります。しかし、ここまで保護してあげても動揺が収まらなかった歯というのは、周囲の骨がほとんどなくなっていて回復できなかったことを意味していますので、抜歯をしても周りに骨が少ないために傷の治りが早く、比較的早期に義歯を入れられる状態になります。
 逆に言えば、歯根の周囲にある程度の骨が残っていれば、抜くことなく、コーヌステレスコープ義歯の支台歯として、使うことが可能です。
 私ども森本歯科医院では、以上のような数々の重要な効果を持ったシステマティックな歯科治療技術・手順は、他に例を見ないと考えております。
 コーヌステックは、歯科の難症例の治療を進める上での一つのテクニックに過ぎず、完成した姿としての名称ではありませんが、コーヌステックという技術を用いることで、上記のようなさまざまな利点を患者様にご提供することができ、私ども森本歯科医院での治療結果を患者様にご満足いただけているとすれば、このコーヌステックがもたらしてくれているさまざまな利点が、非常に大きな要素になっていることは間違いございません。 (患者様のご満足度については、『患者様から頂いたご評価』のページをご覧下さいませ)
 また私ども森本歯科医院では、完成義歯としてのコーヌス テレスコープ義歯がよく噛めて安定的であるのは、なるべくしてなった良好な結果であって、コーヌステレスコープ技術の真価は、難症例の患者様をいかにして合理的に治療できるのかという治療体系、つまりシステムとしてとらえた時にこそ発揮できると考えておりますし、これが一番重要な部分であると考えております。
 システムとしての手順を、別の表現で再度解説しますと ・・・
 咬合崩壊(こうごうほうかい:噛み合わせの崩れ)や歯周病、義歯の不適合など、いわゆる『ガタガタ・グラグラで、充分に噛めない』といったさまざまな難症例に対して、

  1. できるだけ歯を抜くことなく
  2. 早期に数本単位の仮クラウンをどんどん作っていって、それらを連結して全体的なコーヌステック(着脱式・可撤式の仮クラウン・仮義歯)に改造してよく噛める状態を作り、
  3. 動揺していた歯の動揺を抑え、
  4. 1本1本の歯を治療していき、
  5. 歯周病の治療も行いながら、
  6. コーヌステレスコープ義歯の完成に向かって着実に進めていける。

 こういった実践的で合理的な考え方が、『システムとしてのコーヌス テレスコープ』です。
 端的に申し上げれば、『総合一貫治療』『一口腔単位の包括的治療』ということになるのでしょうが、虫歯や歯周病でかなり悪くなってしまったお口の状態を、

  1. できるだけ歯を抜くことなく、
  2. 弱った歯でもうまく活かしながら、できるだけ良い状態に整えて、
  3. 最終仕上げとしてのコーヌステレスコープ義歯を作成し、
  4. 一通りの治療終了後は、10年、20年、さらにはそれ以上の長期安定を求めてメンテナンスを重ねて、
  5. 長期経過後の老化や経年劣化に対しては、コーヌス特有の抜群のメンテナンス性を活かして連結や総義歯化を進め、過去に作ったコーヌステレスコープ義歯を無駄にせずに使い切る

といった手法が、『システムとしてのコーヌス テレスコープ』の考え方となります。

コーヌス テックおよびコーヌス テレスコープ義歯の実例1
(歯周病・咬合崩壊) 59歳 男性

 歯周病のため、長年にわたって歯周病の専門医さんで治療を受けてこられたそうですが、結果的にうまくいかなかったとのことです。 すべての歯がグラグラで、咬合崩壊(こうごうほうかい:噛み合わせが崩れてしまった状態)に加えて、何本かの歯が自然脱落したことで、私ども森本歯科医院を受診してくださいました。

 レントゲン的にも、多くの歯の周辺の骨が少なくなっていることが確認でき、歯周病であることはもちろんのことですが、その背景には咬合力(こうごうりょく:噛む力)による歯周組織の破壊があって、歯周病と咬合力が競合して歯を悪くさせていることが推測できました。 つまり歯周病で歯がグラつき、噛み合わせが狂ってしまった結果、食事等の際にさらに上下間で強く当たる歯が増え、ますます歯が動揺してきて、歯周病と咬合力とが競合的に状態を悪くさせていたわけです。

 こういった症例は、個々の歯の落ち着きを優先しようとしても、ほとんど成功の望みはありません。一刻も早く、全体の状態を落ち着ける必要があります。 まず咬合力を分散・均等化させるために、可能な部分から抜髄をしてブロック単位の仮歯を作り、それらを連結して着脱式のコーヌステックへと作り替えました。

 咬合力の分散・均等化を図った結果と、毎回の治療の余った時間を利用して歯周病治療を行ってきたこと、さらには着脱式であるがゆえの衛生状態の良さとも相まって、コーヌステックが完成したころには、かなり状態が落ち着いてきました。 歯のぐらつきもかなり治まり、歯肉の炎症もひいてきたことがうかがえます。 コーヌステック自体は、約3カ月で完成しましたが、その後の抜歯や根管治療、歯周病等、状態を改善するために、さらに6カ月治療し、初診から9カ月たった時点で、コーヌステレスコープ義歯を作製する準備が整いました。

 コーヌス テレスコープ義歯の作製に移って、内冠を装着した状態です。 コーヌス テックの段階で、違和感・装着感・完成義歯へのご希望等をうかがってありますので、可能な限りそれに沿うように作っていきます。 この症例では、初診の状態が非常に悪かったので、コーヌステックでも充分にご満足いただいていました。

 完成したコーヌス テレスコープ義歯。左が上顎、右が下顎です。 この症例は大柄な男性で、咬合力がかなり強いことが分かっていましたので、義歯自体も少し肉厚の丈夫な感じに仕上げました。
 しかし、一般的なクラスプ義歯に比べて、コーヌステレスコープ義歯は構造的に頑丈ですので、丈夫にするとしても、ごくわずかに厚みを持たせるだけでよく、クラスプ義歯よりも違和感はずっと少なくてすみます。

 コーヌス テレスコープ義歯の装着後の状態です。 緑の丸印は、取り外しのための突起(リムーバブルノブ)です。 コーヌス テレスコープ義歯はガッチリと入ってなかなかはずせないことが多いので、このリムーバブル ノブを使って義歯をはずしていただくことになります。 数年以上使っていただいて、充分に慣れてこられればなくしてしまうことは可能ですが、気になるとおっしゃる患者様はほとんどありません。

コーヌス テックおよびコーヌス テレスコープ義歯の実例2
(歯周病・義歯不適合・咬合崩壊) 67歳 女性

 これも、歯周病に加え、食事等の際に咬合力(噛む力)が強くかかったことで、歯がグラついてきた症例です。かつては保険でのクラスプ義歯を入れていたものの、うまく合わなかったためにずっと外したままになっていて、どんどん噛み合わせが狂ってしまったそうです。 噛み合わせが狂った結果、さらに上下間で強く当たる歯が増え、ますます歯が動揺してきて、歯周病と咬合力とが競合的に状態を悪くさせていました。

 こういった、歯周病と咬合力とが競合的に歯周組織を破壊させている症例では、一刻も早い歯の保護と咬合力の分散・均等化が望まれます。 この症例でも集中的に時間をとって治療させていただき、ずっと外したままになっていた旧義歯も活用して、コーヌステックを作りました。

 もちろん、その間に必要な根管治療や歯周病治療も行い、コーヌステックで保護しても動揺の収まらなかった歯については、残念ながら2本を抜歯し、1本はヘミセクション(分割抜歯)を行って歯の半分は残しました。 コーヌステック自体は、約6カ月で完成しましたが、その後の抜歯や根管治療、歯周病等、状態を改善するために、さらに3カ月治療し、初診から9カ月たった時点で、コーヌステレスコープ義歯を作製する準備が整いました。

 内冠を装着した状態です。数本の歯に、歯周病によるわずかな動揺が残っていますが、コーヌス テレスコープ義歯ならばそういった弱った歯でも保護してくれます。将来的にそういった歯が悪くなって抜けてしまうことがあっても、簡単な修理ですませることができますので、多少弱った歯であっても抜かないで使うことができます。

 

※コーヌステレスコープ義歯の、支台歯自然脱落について
 コーヌス テレスコープ義歯なら、長期の経過後に歯が弱ってしまっても、8割がたの歯は自然に抜けるまで使い続けることができます。痛みや腫れ等、強い症状がある場合はこちらでお抜きいたしますが、その割合は2割程度でしかありません。コーヌステレスコープ義歯なら、ほとんどの場合、その歯自身が持っている寿命を最後まで活かすことができます。

 完成したコーヌス テレスコープ義歯。左が上顎、右が下顎です。 この場合は女性ですので、丈夫さもさることながら、審美性を第一に考えました。 少し弱った歯があったのですが、残存歯の配置バランスが良かったので、大きさ、形ともに、平均的なコーヌステレスコープ義歯に仕上げることができました。バランスがよいので、弱った歯にもあまり無理な力が加わらず、かなり長期にわたって安定して使っていただけることが期待できます。

 コーヌステレスコープ義歯装着後の状態です。 女性ですので、できれば正中線(上下の中心線)を合わせたかったのですが、無理に合わせようとすれば全体のバランスが崩れてしまいます。試適のときにお尋ねして、これで十分というお答えをいただいたので、正中合わせは断念し、それ以外は、できるだけ審美性が良くなるように、技工士さんに頑張ってもらいました。

コーヌス テックおよびコーヌス テレスコープ義歯の実例3
(咬耗・低位咬合・咬合崩壊) 57歳 男性

 これはちょっと特殊な症例です。この患者様は噛み合わせの力が非常に強く、たぶん夜間の歯ぎしりも強くて、緑の丸でお示しした下顎の前歯がすっかり磨り減ってしまっています。 歯が磨り減っているせいで非常に噛みにくくて痛みもあります。 あちこちの歯科医院様で入れ歯を作ってもらったけれどもどれも合わず、また、クラスプや入れ歯本体がすぐに壊れたそうです。歯周病はあまり強くありません。

 噛み合わせた状態です。歯が磨り減って噛み合わせが低くなり、下の前歯がまったく見えなくなっています。また入れ歯が入っていなかったせいで、左上の歯がさがってきています(緑の丸印でお示しした部分)。  安定の良い丈夫な入れ歯を入れるためには、スペースの確保も重要で、5ミリ以上の咬合挙上(こうごきょじょう:低くなってしまった噛み合わせを持ち上げるを行う必要があります。

 『噛み合わせの力がかなり強く、全体が低くなってしまっている状態』から咬合挙上をするためには、部分部分の仮歯を作ってそれをつなげていく通常の方法はとれません。(この症例では、下顎前歯が短すぎて仮歯が作れませんし、もし無理に作ったとしても、その部分だけに強い力がかかって、仮歯が壊れるか、歯が傷むかのどちらかになります)  そこで、全体を一挙に挙上するため、まず下顎に関して、全体をおおえる義歯を作り、コーヌステックとして使うことにしました。

 裏側から見たところです。前後左右の位置調整の必要があったため、実際の歯の位置と、コーヌステックの人工歯の位置を完全に一致させることはできませんでした。 難症例の患者様はほとんどの場合、顎位(上下の顎の位置関係)も狂っていますので、できる限りコーヌステックの段階で修正するようにします。 この症例では、高さも、前後左右の位置も、変えることになりました。これはリスクが高いことですので、慎重に経過を見ながら、上顎も含めて微調整を繰り返しました。

 上顎のコーヌステックです。下顎のコーヌステックがある程度安定してから作り始めました。 上顎は、個々の歯の歯冠長(歯の高さ)がある程度ありましたので、通法通り、部分部分の仮歯を作り、それを順次連結して、コーヌステックとしました。 この症例では、右側の臼歯部(緑で示した部分)の義歯床・人工歯を付けませんでした。なくても、下顎がしっかりしていましたので充分に安定が得られていましたし、患者様にお聞きしても、特に不自由はないとのことでしたので、省略しました。もちろん、理想論で言えば付けた方がいいのでしょうが、付けて調整をするためには約1カ月かかります。難症例の患者様は、遠方からお通いいただいていることが多いので、たとえ1カ月といえども、短縮できるものは短縮したいと考えました。

 上顎のコーヌステックを裏側から見たところです。 この症例は、歯周病はほとんどありませんでしたし、先に下顎を作ってある程度の安定が得られていましたので、上顎に関しては、コーヌステックそのものの作製は容易でした。 しかし噛み合わせの力が非常に強いので、使っていただいているうちにどんどん合成樹脂が摩耗してきましたし、また破折するおそれもありましたので、補強するために、かなり肉厚なコーヌステックとなりました。

 コーヌステックを装着した状態です。初診時ではほとんど見えなくなっていた下顎前歯も、適切な高さに回復することができました。 5ミリを目標に咬合挙上を行い、最初のうちこそ筋肉がその引き延ばされた状態に慣れていないので多少の違和感がありましたが、2~3週間のうちに慣れてこられて、食事にも全く困らない状態になりました。 歯のほとんどが磨り減ってしまうほど噛み合わせが強いということは、ほとんどの場合、筋肉や骨が丈夫であることを意味していますので、噛み合わせを大きく変えても、いったん慣れてこられれば、その後に大きな問題が出ることはあまりありません。

 すべての準備が整ったので、コーヌステレスコープ義歯の作製に移りました。 もともと歯周病は強くありませんでしたが、コーヌステックを着脱式で使っていただくことによって、歯肉の状態はさらに良くなり、歯肉炎はもちろん、歯の動揺も全くない状態でコーヌス テレスコープ義歯の作製に移ることができました。 下顎のコーヌステック作りに初診から約4カ月、上顎のコーヌステックまでに6カ月、さらにその他の治療に2カ月かかり、初診から8カ月たった時点で、コーヌステレスコープ義歯を作製する準備が整いました。

 内冠を装着した状態です。 咬合力(噛み合わせの力)が強いことから、将来的にコーヌス テレスコープ義歯自体の磨り減りも大きいだろうと予測して、義歯本体を肉厚にすることや丈夫さを第一に考えました。 その分、内冠はできるだけ薄く作ることが求められますので、コンパクトな内冠を目指しました。

 コーヌステレスコープ義歯として完成し、3週間ほど経過した状態です。 もともと噛み合わせが強いので義歯が沈下しやすく、しっかりと入ってしまって外しにくいことが予測されましたので、緑の丸印でお示しした義歯を取り外すための突起(リムーバブルノブ)を少し大きめに作ってあります。装着後数年が過ぎて、取り外しに充分に慣れてこられれば、小さくしたり、なくしたりすることも可能です。

コーヌス テックおよびコーヌス テレスコープ義歯の実例4
(反対咬合・咬合崩壊) 55歳 男性

 これも、ちょっと特殊な症例です。この患者様は、元々はわずかな反対咬合(受け口)だったそうですが、奥歯を抜かれてしまうことで、どんどん深い反対咬合になっていったそうです。  噛みにくいことに加えて、このままだとどんどん状態が悪くなってしまうことを恐れておられました。  実際に下顎を動かしてみると、わずかな反対咬合の位置にまで容易に動かすことができたので、以前はわずかな反対咬合でしかなかっただろうということが、推測できました。

 口を少し開いていただいた状態です。 奥歯が上下とも失われていていることが分かります(緑の丸の部分)。  また、前の歯科医院様で、たぶん上顎前歯の動揺を抑えるために?、合成樹脂で前歯が連結されていて(青の丸の部分)、その厚みのせいで、さらに下顎が前に押し出される結果になったと思われました。  以上のようなことから、本来この症例は、ここまでひどい反対咬合ではなかっただろうと思えましたので、コーヌステックを適切に使うことで、最終的には正常な咬み合わせに回復できると判断し、コーヌス義歯の方針としました。

 初診時のパノラマレントゲン写真です。前の歯科医院様での抜歯のあとがまだはっきりと残っています(緑の丸の部分)
 この症例も、歯周病のリスクは、比較的低いと思われましたし、残っている歯もすべて、比較的利用しやすい状態でした。
 また、顎関節にも異常は認められないので、噛み合わせを変えても、大きな問題は出ないだろうと予測できました。

 上顎のコーヌステックが完成した状態ですです。表面から見たところです。
 ほぼ通法通りの作製となりましたが、この症例は、噛み合わせを前後的にも上下的にも変えざるを得なかったので、顎関節症を警戒して、特に慎重に進めました。  しかし、比較的順調にコーヌステックを作り進めることができました。

 完成した上顎のコーヌステックを裏から見たところです。 噛み合わせを安定させるために、できるだけ早期に、ピンクに見えている義歯床部分を作り、コーヌステックの一部としました。

 下顎のコーヌステックです。 上顎と同様、噛み合わせをできるだけ早期に改善して、できるだけ早期に安定させるということが必要でしたので、ピンクに見えている義歯床部分を作り、上顎との安定した噛み合わせを確立しました。

 下顎のコーヌステックの裏面です。 大柄な男性で、顎の骨そのものは丈夫でしたので、安定の良い義歯床付きのコーヌステックを作ることができました。

 コーヌステックの完成。 口を閉じた状態です。初診から、約6カ月経過した時点です。 いよいよ仕上げに向けて、最終チェックの段階に来ました。
 この症例は、反対咬合を正常咬合に修正したので、噛み合わせの調整には細心の注意を払いながら、この状態までたどりつきました。 顎関節にも、特に異常な症状は認められませんでした。

 コーヌステックの完成。
 少し口を開いていただいた状態です。 アゴの動きもスムーズで、よく噛めて食事も充分にできるとのことを確認し、仕上げに向けて進むことにしました。

 内冠形成の状態。
 すべての準備が整って、いよいよコーヌステレスコープの作製を開始したところです。歯の動揺もほとんどありません。噛み合わせを少しでも有利な状態に仕上げるために、内冠形成の時点から、角度や長さに特に細心の注意を払いました。

 内冠を装着した状態。
 内冠形成と同じく、内冠の作製においても、この症例は噛み合わせに細心の注意を払わなければならないことを技工士さんに充分に説明し、最終補綴物が少しでも理想的な形に近づくように配慮しました。

 コーヌステレスコープ義歯を装着後、約2ヶ月が経過した状態です。
 正常な噛み合わせになっていることはもちろん、正中(上下の中心線)も、比較的うまく合わせることができました。
 この症例は、噛み合わせを大きく変えたことから、顎関節症や顎位の変化が起きる可能性があったので、通常よりも長く、経過観察しました。 しかし、噛み合わせにも、開閉口運動・側方運動にも問題はなく、2ヶ月後にいったん終了とさせて頂きました。

 側方から見た状態です。 歯科医学的な理想とされている状態に、ほぼ作り上げることができました。

『総合一貫治療』『包括的一貫治療』としてのコーヌス テレスコープ システム

 コーヌス テレスコープは、通常、『義歯の一つの方法』としてだけしか、とらえられていないようです。歯学の学会でも、大学歯学部や歯科大学の専門家でも、あるいは、コーヌスをある程度扱っておられる他の先生方も、どうやらそういったお考えのようです。
 しかし、私ども森本歯科医院では、たくさんの症例を経験させていただいているうちに、単なる入れ歯の方法から発展して、難症例の患者様に対して、歯をできるだけ抜かずに早期に食事ができるようにし、1本ずつの歯を着実に治療しつつ、歯周病の治療も行え、10年後、20年後までもメンテナンスが可能な『総合一貫治療』『包括的歯科治療』のノウハウへと進化してまいりました。
 治療中は仮クラウン・仮歯としてのコーヌス テックをお使いいただきますが、これでも充分に噛むことができるため、むしろ完成義歯としてのコーヌス テレスコープ義歯を装着してからしばらくのあいだは、噛みにくいとおっしゃることさえあります。
 もちろん、完成義歯としてのコーヌス テレスコープ義歯の方がすべての面でベターであることは間違いありませんので、1~2週間もたてば新しい義歯にも慣れてこられますし、1カ月もたてばますます安定度が増してきて、『なんでも噛める』と言っていただける状態になります。

システムとしてのコーヌステレスコープの実際的な流れ

 私ども森本歯科医院では、コーヌス テレスコープ義歯の作製そのものは、大して難しいものとは思っておりません。『お膳立て』ができた状態からならほとんどワンパターンの流れで、5回ほどの通院回数で済みますし、実際に義歯を作ってくれるのは、熟練した技工士さんだからです。
 圧倒的に難しいのは、『いかにお膳立てをするか』です。『痛い。噛めない。グラグラ。ガタガタ』とおっしゃる難症例の患者様に対して、いかに早期に、しかも要領よく、安定的な状態を作ってさし上げるのか……。
 もともとの状態が悪いわけですから、個々の歯の経過も読みにくく、『とりあえず落ち着けられる部分から落ち着けていきましょう』という感じで治療を進め、仮クラウンの数をどんどん増やして、可能ならば旧義歯と連結していくことで、コーヌステックへと作り変え、それでようやく一段落。その患者様に対する峠は越えています。あとは、大学でも教えている通りの根管治療や歯周病治療をできるだけ丁寧に、高いレベルで行って、『お膳立て』を整えていくだけです。
 ですので、個々の歯よりも先に、全体の状態を完全に落ち着けていくことはできません。しかし、ある程度の治療を済ませた個々の歯を積極的に保護してあげる手段を講じておかないことには、その歯はもちません。個々の歯を治療しながら、全体の安定化も積極的に図って、最終的にはできるだけ歯を抜くことなく、安定的に仕上げさせていただく、というのがシステムとしてのコーヌステレスコープの目指しているところですし、実際的な流れになります。

詳細編のご案内
 コーヌス テレスコープ システムについては、まだまだ書きたいことが、たくさんございます。また、こうしてホームページを自分自身の手で作成・運営している経験上、歯のことでお悩みの多くの患者様が、きわめて詳細な情報を求めておられることも分かっております。
 しかしホームページ作成上、システム的な長さの制限がありますので、詳細については次の【歯科難症例治療システムとしての コーヌス テレスコープ : 詳細編】に分割せざるを得ませんでした。
 【詳細編】には、さらに詳しい解説や、大学での縦割り教育システムが、コーヌス テレスコープ システムをはじめとする『一口腔単位の包括的治療』や『総合一貫治療』といったものを阻んでいる可能性が高いこと、さらには『コーヌス テレスコープ システム』や『コーヌステック』という呼び名に関する私ども森本歯科医院の考えにつきましても言及しておりますので、ぜひ【詳細編】もご覧下さい。
【歯科難症例治療システムとしての コーヌス テレスコープ : 詳細編】は、ここをクリックして下さい。

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