院長プロフィール・学会レポート・サイトポリシー
院長 森本剛(もりもと つよし)プロフィール
- 昭和32年、大阪市阿倍野区で生まれる。 大阪市立阿倍野小学校、大阪市立阿倍野中学校、大阪府立住吉高校(27期生)を経て、
- 昭和57年、大阪大学歯学部卒業。(29期生)
- 同年~昭和60年、大阪大学歯学部付属病院 第一口腔外科勤務。 (以下、大学医局より、派遣医として非常勤勤務。 昭和57年~58年、旧大阪府立病院歯科。 昭和58年~59年、旧雪印乳業大阪工場歯科診療室。 昭和59年~63年、丸紅大阪本社歯科診療室)
- 昭和60年6月、現在の地にて開業。(開業後3年間は、丸紅兼務)
所属団体・学会・グループ
- 日本歯科医師会
- 大阪府歯科医師会
- 大阪府平野区歯科医師会
- 日本歯科医学会
- 大阪大学歯学会
- 日本顎咬合学会
(認定医:平成25年7月~)
(日本顎咬合学会誌『咬み合わせの科学』 編集(査読)委員:平成28年6月~令和元年6月)
(指導医:令和元年6月~) - 日本産業衛生学会
- 日本補綴歯科学会
- 日本労働安全衛生コンサルタント会
- 日本労働衛生研究協議会
- 大阪歯科労働衛生コンサルタント協議会 (理事)
- スタディグループ MACの会
取得資格
- 歯科医師 (歯科医籍85399号)
- 労働衛生コンサルタント (厚生労働大臣 第百四十八号 合格認定 ・ 保-第五六三五号 登録)
- 作業環境測定士(第二種 登録番号二七-二五八〇)
- 日本歯科医師会認定 産業歯科医 (第12881号)
- 日本顎咬合学会 噛み合わせ認定医 (第5946号)
- 日本顎咬合学会 噛み合わせ指導医 (第893号)
日本歯科医師会 平成30年・令和元年度研修分 生涯研修事業修了証
2022(令和4)年8月31日まで有効
平成28年・29年度分 (2020(平成32)年8月31日まで有効) 学術研修修了証・生涯研修事業修了証はこちら
平成26年・27年度分 (2018(平成30)年8月31日まで有効) 学術研修修了証・生涯研修事業修了証はこちら
平成24年・25年度分 (2016(平成28)年9月30日まで有効) 学術研修修了証・生涯研修事業修了証はこちら
平成22年・23年度分 (2014(平成26)年9月30日まで有効) 学術研修修了証・生涯研修事業修了証はこちら
平成20年・21年度分 (2012(平成24)年9月30日まで有効) 学術研修修了証・生涯研修事業修了証はこちら
学会レポート (令和6年(2024年)第42回日本顎咬合学会学術大会・総会)
令和6(2024)年6月8日(土)・9日(日)に、東京有楽町の東京国際フォーラムで開催されました第42回日本顎咬合学会学術大会・総会に、昨年と同様、座長(CHAIRMAN)として参加してまいりました。
いつものように、さまざまな研究発表や症例発表に触れて、新たな知識や臨床上のヒントを得られたことで、非常に有益な学会参加となったと感じております。
中でも、同じく座長として学会運営の一部を担当させていただいた神戸市西区の江本歯科医院、江本寛先生との知己を得られたことは、特筆すべき成果だったと確信しております。
まったくの初対面だったのですが、少し話しているうちに、その素晴らしいお人柄や、高度で深い歯科知識に驚かされ、また細やかな心遣いも感じられて、『この先生は素晴らしい。ぜひ親しくなりたい』と強く感じました。その後もいろいろとお話しをすることができ、今後も長くお付き合いをさせていただければ、と強く願っているところであります。
また、江本先生と私が担当させて頂いたG504の学術発表においても、どれもが素晴らしい内容で、座長をお引き受けして本当に良かったと、強く思いました。
多くの場合、若い先生は意欲的な考えに基づく新たなチャレンジが多く、女性の先生は細やかな配慮の感じられる診療をしておられ、ある程度の経験を積まれた先生は深い洞察の上に成り立った方針を立てられることが多いのですが、今回もまた、その思いを強くいたしました。
立場や経験によって考え方や治療方針が違ってくることは当然のことかと思いますが、我々医療に携わる者は、それぞれが信じるところに従って全力を尽くすことこそが、後々の成果や有意義な反省に結びついていくわけですので、こういった場で口演発表を行うことは、それを大いに促進してくれるだろうと、改めて感じました。
私が座長として直接関与した口演発表以外では、全体的にデジタル化の内容が多くなってきているなと感じました。また、日本全体としての高齢化がますます進む中、老化に対する具体的で実践的な歯科としての対応がもっと議論されて然るべきかなという思いも強くいたしました。
新型コロナによる停滞傾向も、もう完全に払拭されると思いますので、来年もさらなる発展を期待して、また参加させていただきたいと思っております。
学会レポート (令和5年(2023年)第41回日本顎咬合学会学術大会・総会)
令和5年6月17日(土)・18日(日)に東京有楽町の東京国際フォーラムで開催されました第41回日本顎咬合学会学術大会・総会に参加してまいりました。
4年ぶりとなるリアル開催で、コロナ禍の3年間でもオンライン開催はされていて参加はさせていただいていたものの、やはり対面で語り合わなければ微細な情報を得られないことも多く、もどかしさを感じていました。今回は、学術的な意見交換はもちろんのこと、親しい先生方とは近況報告的な会話もでき、やはり学会は対面で行った方がいいという思いを強くしました。
また今回は、口演発表の会場での座長(CHAIRMAN)を明海大学歯学部の松田哲教授と共に務めさせていただき、主に若手の発表に対する質問や評価を担当させていただくことで、私自身の良い勉強にもなり、新しい視点やヒントを与えていただけたと、非常に有意義に感じました。この日本顎咬合学会においては指導医の立場を与えていただいていることから、たぶん来年も座長のご指名を受けるかと思いますので、積極的に取り組ませていただきたいと感じました。
それ以外の会場を回った全体的な印象として、10年ほど前から始まっている歯科におけるデジタル技術と、歯科医師の目と指と経験を使った昔ながらのアナログの治療技術は、いつになったら融合するのだろう、果たして融合する時が来るのだろうかという思いを、また強く持ちました。客観的にデータを使って表現・比較できるデジタル技術に対し、アナログ技術は『大きく・小さく』『多く・少なく』といった主観によって左右される表現を多用せざるを得ず、ある一つの表現であっても、それを受け止める個々人それぞれのイメージによってかなりの差があることを経験的に知っていますので、その差を埋めるのは、密接で濃厚なコミュニケーションでしかないのだろうと思っております。
ただ私は、デジタル技術の可能性にもかなりの期待をしておりますので、きっとそのうち、飛行機や自動車の操作シミュレーターのように、名医とされる先生の治療手順をトレースできる機械が(原始的なものはすでにあるようですが)、発達してくることを期待したいと思っております。その期待も込めて、また来年も参加させていただきたいと思っております。
学会レポート (令和元年第24回日本口腔顔面痛学会学術大会)
令和元年9月28日(土)・29日(日)に川崎市産業振興会館で開催されました第24回日本口腔顔面痛学会学術大会に参加してまいりました。
歯や歯ぐきが原因する痛みではなく、単なる脳や神経の知覚として起きる痛みは、うっかりすると歯や歯ぐきを原因とする痛みと間違いやすく、しっかりとした診断をすることが要求されます。
この学会は、そうした『痛みのメカニズム』に対する理論や考え方、さらには診断法について究明しようとすることを目的としています。
今回も、大脳内部や神経系統のトピックスがたくさん発表されましたが、インプラント後の知覚麻痺等の症例研究や顎関節症の病態についての臨床例に基づく発表もかなり見られました。
一般開業医である私としては、歯科医師としての資格の問題もあり、脳神経科的な処置はできませんので、歯や歯ぐきやその周辺に原因がないと判断した場合、大きな病院等にご紹介させていただかざるを得ません。しかしその判断は、かなりの自信を持ったものでなければならず、それはすなわち、歯科医師としての知識や経験もさることながら、頭頸部の神経系統や筋系統の幅広い知識を持っておくことが重要であると思われました。
ただ、ありがたいことに、頭頸部痛の多くは一刻を争うものでなく、筋肉痛などは時間と共に消退していくことが多い疾患ですので、ゆっくりと時間をかけての診断が可能であるという意味で、焦ることなく対応すべきだという認識を強く持ちました。
この分野は奥が深く、簡単に極めることなどできませんが、今後も継続的に着実に知識を得ていきたいと思いました。
学会レポート (令和元年第37回日本顎咬合学会学術大会)
令和元年6月22日(土)・23日(日)に東京有楽町の東京国際フォーラムで開催されました第37回日本顎咬合学会学術大会に参加してまいりました。
この顎咬合学会の学会誌編集委員をさせていただいていることから、レポーター役も果たさなければならず、主として私に割り振られた分担の会場での講演を拝聴することになりました。
まず強く印象に残ったのが、『若手歯科医師の支部選抜発表』での粟谷英信先生による『Ⅲ級不正咬合に対して矯正とインプラントを用いた咬合再構成』のご口演でした。若手ながら、しっかりした理論構成と技術を駆使しての症例は、『さすがは支部選抜』と思わせる内容で、新進気鋭の若手が競う中で、優秀賞を獲得されました。
次に興味をひかれたのが、DTプログラム『デジタルとアナログの融合』セッション、前川泰一先生の『Digital Occlusion -デジタル技工に咬合を+(プラス)する-』でした。デジタル咬合器・バーチャル咬合器の使用によって、従来の石膏模型の咬合器ではできなかったことができ、対合歯を半透明にすれば、咬頭嵌合した状態で、どことどこが当たってるのかが見え、さらに、バーチャル咬合器としてネット上でやりとりすれば、遠隔地の歯科医師と咬合関係や配列などの技工状況の意見交換することも可能。また、従来の金属製の咬合器では望むべくもなかった『生体のしなり』の要素を、デジタル咬合器では加味することも可能であると示して下さいました。
このセッションにおいては、まだまだアナログに頼らざるを得ないチェアサイドの歯科臨床とは違って、歯科技工の世界では、デジタル技術が素晴らしく発展してきていることを強く実感させられました。
また、今回の顎咬合学会学術大会の中で、すでに要件を満たしていた私自身の指導医認定の最終面接をしていただき、正式に指導医として認定されたこともあって(令和元年6月現在、大阪府で9人目の認定)、印象深い学会参加となりました。
学会レポート (平成30年日本顎咬合学会 認定医教育研修会、
九州・沖縄支部学術大会)
平成30年12月8日(土)・9日(日)に博多のエルガーラホールで開かれました日本顎咬合学会の認定医教育研修会、ならびに九州・沖縄支部学術大会に参加してまいりました。
11月の大阪に続いての、同趣旨の研修会・学会参加となりましたが、認定医や学会誌の編集委員をさせていただいている立場上、できるだけ多くの知識を得ておく必要がございますので、時間が許せばということで、博多まで出張いたしました。
まず強く印象に残ったのが、加々美恵一先生の『歯を失わないために力のコントロールを考える』でした。咬合力が往々にして咬合を破壊することがあるという事実は、歯科医師の中では常識的であり、咬合力が強くかからない歯には動揺が起きにくいことも考え合わせると、歯を失う一番の原因は、齲蝕でもなく歯周病でもないかもしれないとさえ思えることがよくあります。
今回の加々美先生の特別講演は、そういった咬合力の持つさまざまな事実を、きわめて臨床的に分かりやすく解説して下さり、口腔内で起きているさまざまな症状や現象に、咬合力が強く関与していることを明解に理解できた思いがしました。
また大谷一起先生は、接着ブリッジの新しい知見をご披露下さり、脱離しやすいことに関して患者様のご理解が十分に得られていて、脱離時にすぐに再来院して下さるならば、やはり魅力的な手法だと思いました。しかしそれには、患者様の充分な理解が得られていて、常に早期に再来院して下さる状況という、結構ハードルの高い問題がクリアされなければやはり躊躇するところ、というのが偽らざる感想でした。
ともあれ、知識は自ら得ようとしなければ得ることはできませんので、今後も前向きに知識を吸収したいものだと強く印象づけられました。
学会レポート (平成30年日本顎咬合学会 認定医教育研修会、
近畿・中国・四国支部学術大会)
平成30年11月10日(土)・11日(日)に開かれました日本顎咬合学会の認定医教育研修会、ならびに近畿・中国・四国支部学術大会に参加してまいりました。
土曜日曜と連続して開かれますので、以前は一連の学会だと勘違いしていた時期もあったのですが、土曜日が認定医に対する教育研修会、日曜日が支部学術大会という位置づけであることが、最近になって分かってきました(^_^;)。
ともあれ、認定医さらには日本顎咬合学会誌『咬み合わせの科学』の編集委員として、高度な知識、新しい知識を求めて参加させていただき、かなり多くの収穫を得ることができました。
まずは九州大学歯学部の前田英史教授の『歯内疾患を治癒に導く』では、難治性症例に対するさまざまな考え方やアプローチの方法をご提示いただき、根管処置の難しさと、それに対する多くのヒントをいただきました。
また、歯内療法の超有名人であり神様的存在である平井順先生の『補綴を考慮した歯内療法』では、歯内療法の細部にいたる技術論はもちろん素晴らしかったのですが、『歯内療法はあくまでも補綴のためのイニシャルプレパレイションである』という考え方は、当たり前のようであって、しかしこれまでほとんど指摘されたことがなかったことであるがゆえに、新鮮な思いと共に受け止めることができました。さらに、長期的に安定した顎位のもとでの下顎運動の機能確立は欠かせず、『すべての歯科治療は咬合に始まり咬合に終わる』と言われる言葉通り、歯内療法の分野においても咬合を考慮した補綴計画の元で行われることが、歯の長期保存を目指すうえで重要である、というお考えには、まさに超有名人であるゆえんであると、非常に納得できる思いがしました。
支部学術大会は、若手の発表の場とも位置づけられていますが、粟谷英信先生の細部まで丁寧な治療を拝見して、今後のご活躍が期待できると、かなり感心させられるものがありました。
その他の先生方のご発表もかなり充実していて、さまざまに新鮮な刺激を与えていただいた研修会・学会参加となりました。
学会レポート (第8回日本国際歯科大会)
平成30年10月5日(金)~7日(日)まで、パシフィコ横浜で開催されました、第8回日本国際歯科大会に参加してまいりました。
4年に1回開かれるこの国際大会には、もうずいぶん以前から参加させていただいておりますが、毎回盛況になってきていて、今回は歯科衛生士さんの当日受付を制限しているほど、多数の参加者があったようでした。
いつものように、事前抄録等で目をつけてあった発表を聴かせていただきました。どれも私が聴いてみたいと思った演題であったので、それぞれに興味深く拝聴いたしましたが、特に、日本顎咬合学会誌の編集委員会のメンバーとして親しくさせていただいている関野愉先生の、『根拠を知らずして臨床を語るべからず』で強調された歯周病論は、非常に斬新な視点も語られていて、これまでの、『誰が言ったか分からない』ような、根拠がないながら常識のように捉えられていた多くの考えを打破する素晴らしい口演であったと感じました。
また、同じく須呂剛士先生の『口腔内規格撮影 ミラー使いのコツ教えます!』は、日常臨床において必須である症例写真の基本的な撮影法や原則を、理論立てて解説してくださり、困難な状況でもうまく撮影できるノウハウの数々をご提示いただけたことは、今後の症例写真撮影の大きなヒントになることは間違いないと思っております。
10月というのに、真夏のような暑さの中での学会参加でしたが、さまざまな新しい考えや手法に触れさせていただき、大変有意義だったと思っております。
学会レポート (第35回日本顎咬合学会学術大会・総会)
平成29年6月10日(土)、11日(日)に東京有楽町の東京国際フォーラムにて開催されました第35回日本顎咬合学会 学術大会・総会に参加してまいりました。
昨年は、私自身の口演がありましたので、日本顎咬合学会編集委員としてのレポーター役は半分に免除していただけたのですが、今回は私自身の発表がありませんでしたので、両日とも、しっかりと編集委員としてのレポーター仕事をさせていただきました(^_^;)。
さまざまな口演を聞かせていただいた中で、強く印象に残ったのが、増田純一先生の『口蓋は、口腔機能を鏡のように映す』でした。増田先生は、口蓋形態が非常に重要で、老人のフレイル(弱化)問題も、咀嚼、特に口唇と前歯を使ってかみ切ることが重要で、フレイル予防は口にあり、と締めくくられました。
また加々美恵一先生は、『精密な治療をしようとすればするほど、咬合は重要』と語られ、充分に時間をかけての理にかなった治療手順は、加々美先生の深い知識と卓越した技術、そしてその素晴らしいお人柄が織りなす芸術作品を見ているように感じられました。
次に、晋光江洋先生は、残存歯が少なく歯周病も進行している高齢者には、個人的な形態と機能の調和をうまく図りながら治療することが重要であると説いてくださったことには、大きく頷かされるものがありました。
全体的に感じられたこととして、まさに現代日本の超高齢化社会を反映して、高齢者に対する歯科治療を意識した口演が多かったように思われました。30歳前ぐらいの若年者に対しては、単に1本ずつの治療をいかに上手くやりこなすかを意識していればOKかと思われますが、40歳も超えてくれば、その患者様の今後を予測して的確な処置を施していかなければ、『またすぐに悪くなってしまう』といったリスクがあり、60歳を超えてくれば、生涯を見通しての、さらに厳しく申し上げれば、終活(終末活動)の一環としての考え方が必須になってくると思っております。
まさに歯科界をあげて、もはや待ったなしとなった超高齢化社会に対する具体的で実践的な歯科治療を模索していかなければならないだろうと思っております。
学会レポート (第23回日本歯科医学会総会)
平成28年10月21日(金)~23日(日)まで、福岡国際会議場/福岡サンパレスで開催されました第23回日本歯科医学会総会に参加して参りました。
この学会は日本の歯科医学界の中心・頂点に位置する学会で、演題もバラエティーに富んでいます。この数年、日本の歯科医学の傾向は、高齢化社会に対する歯科医学の対応、といったところにあると思われます。もはや待ったなしの高齢者への対応は、当然のことながら体力の弱られた患者様への対応力が要求され、歯や入れ歯だけを対象にするような考え方では対処できなくなってきつつある、ということが実感です。今だけではなく、かなりの長期にわたっての体の弱りに対応できる歯科的な対応が望まれますが、人類初といってもよい日本の超高齢化社会の到来は、お手本がない分、何をすべきなのか、どの方向に進めばいいのかさえ分からない、といったところが現実かと思っております。あるいは、社会の進歩や高度化が進むにつれてストレスが高まっていることもまた事実であるようで、患者様のニーズの高まりとも相まって、昔なら治療の対象とならなかった、あるいは疾患とさえ認識されていなかった歯ぎしりや食いしばりや睡眠時無呼吸などが、重要かつ必須の治療対象という認識が固まりつつあるように感じております。
そんなこともあって、今回は『高齢化歯科のキーワードは栄養である』と『ブラキシズムを口腔と全身との関わりから再考する』の二つのシンポジウムを、興味深く聞かせて頂きました。
高齢問題に関しては、歯の喪失による咀嚼能力の低下が、老化を加速している可能性が極めて高く、やはり口から噛んで、きちんとした栄養摂取をすることが、老化を遅くさせ、健康な状態を少しでも長く維持するためには必須であるということが、複数の先生が異口同音に述べられました。
一方のブラキシズム、つまり歯ぎしり・食いしばりと全身の関わりについては、少し首をかしげることが多くありました。一般的には睡眠時のブラキシズムが注目されがちではありますが、日中の覚醒時でも作業中等に食いしばりは起きていて、労働衛生コンサルタントとして、興味のあるところであります。睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムとではメカニズムに違いがあるとの研究結果が発表されたものの、共通の対処法として一番一般的で効果的であるとして数多く使用されるスプリントは、就労時間が長くなりがちの労働現場においては、齲蝕発生の危険性をはらんでいますので、歯科医師としては違和感があり、また労働時に多少たりとも発音・発声にマイナスを惹き起こすスプリントでは、労働災害に対する危険性は増すのではないかという危惧も考えられます。
そういったことから、覚醒時のブラキシズムに関して、何かもうひと工夫、いい知恵は出てこないのか、というのが偽らざる感想となりました。
博多は食べ物もおいしく、風情もあって好きな街です。物価も、大阪や東京より安く、日頃お世話になっている先生方や同級生たちと食事をするのにも最適な街です。今後も、また何か機会があったら訪れたいと思っております。
学会レポート (第34回日本顎咬合学会 学術大会・総会)
平成28年6月11日(土)、12日(日)に開催されました第34回日本顎咬合学会 学術大会・総会に参加してまいりました。
毎年参加させて頂いているこの大会ですが、今回はコーヌステレスコープシステムについての口演をさせて頂いたり、この学会が発行している学術雑誌『咬み合わせの科学』の編集(査読)委員に任命して頂いた上での参加ということもあって、特に印象に残る大会となりました。
私自身の口演の内容は、このホームページの『講演・発表』のページに掲載させて頂いておりますのでここでは省略させて頂くことにして、編集(査読)委員としての初仕事となったアメリカから招聘したTakei先生とKlokkevold先生の講演内容の『咬み合わせの科学』へのレポート出稿の仕事は、その責任の上からも熱心に聴講せざるを得ず、また内容的にも非常に興味深いものでしたのでここで紹介させて頂きます。
両先生とも熱心にご講演くださったのですが、特に、Takei先生の語り口には、情熱や信念が感じられ、『歯科医師は歯科医師であるより口腔医であれ』ということなど、非常に感銘を受ける内容が多くありました。
技術的な面では、天然歯の歯根面は比較的平坦であるのに対し、インプラントはネジ山があるのでルートプレーニングが実質的には不可能である点、さらにはインプラント体と歯冠部の幅径の大きな差が、清掃性をさらに悪くしている点を指摘されました。
またインプラントは、天然歯と違って、歯頚部付近の靭帯接合がないから、歯頚部からの細菌侵入を簡単に許してしまうと言われ、『残せる天然歯をできるだけ抜かないで下さい』と強調され、天然歯を残すために患者に適切な時期での行動変容、つまり動機づけを起こさせることこそが重要であるということを、ビデオを通してご説明頂いたことは、非常に印象的でした。
『咬み合わせの科学』の編集(査読)委員は、少なくとも今後何年かは続けさせて頂くことになると思いますので、こうした高度な知識に接する機会も多くなると思われ、来年以降の参加も楽しみになってまいりました。
論文発表 (日本顎咬合学会誌『咬み合わせの科学』
平成28年4月25日発行 第36 巻 第1・2合併号)
平成27年11月25日発行の第35巻第3号に続いて、コーヌスに関する論文を発表させていただきました。
今回の論文は、題名こそ前回の論文とずいぶん違っていますが、私の中では前回の論文の続きになっています。つまり、前回の論文では、コーヌスの持つ最大の特徴である『補綴前処置・補綴処置・補綴後処置』のうち、『補綴前処置・補綴処置』を詳しく書いたものであり、今回の論文では、『補綴後処置』を詳しく書かせていただきました。 これは、論文の投稿規定上、多くの枚数を一度には掲載させていただけないので、止むを得ず二つに分けたということが、その理由となります。
この二つの論文では、私のコーヌスに対する考え方や知識・症例のほんの一部を書かせていただいたに過ぎませんが、枚数等に規定がある中での概略を披露させていただけたということでは、満足いたしております。
ただ、これは私のミス、注意力の不足以外の何ものでもありませんが、両方の論文中に、いくつかのミスが見つかっております。
一方、この二つの論文を高くご評価いただいたようで、このたび、この『日本顎咬合学会誌 咬みあわせの科学』の編集委員(査読委員)に就任させて頂くことになりました。査読委員の仕事は、内容そのものを審査することですが、こういったケアレスミス的なものも充分にチェックさせて頂かねばならないなと、気を引き締めているところでございます。
森本剛コーヌス論文2 日本顎咬合学会誌『咬み合わせの科学』平成28年4月25日発行 第36 巻 第1・2合併号 pdfは、ここをクリックしてください
学会レポート (日本学術会議歯科委員会主催
『シンポジウム 健康長寿と再生医療』)
平成27年12月13日(日)に、東京の市ヶ谷にある日本歯科医師会館で開催されました『シンポジウム 健康長寿と再生医療』の講演会に参加してまいりました。
このシンポジウムは、日本学術会議歯科委員会が主催で、日本歯科医学会、日本歯学系学会協議会の共催ということで、これまでこの三者が共催したことはなく、初の試みということでしたが、数多くの大学や研究機関の研究者が参加して、活発な議論が交わされました。
『再生医療』という言葉が示す通り、いま流行りのiPS細胞を使って、歯や歯周組織、さらには歯髄の再生まで目指そうというもので、まだ数十例しか成功していない、まさに近未来の歯科医療の可能性を勉強させて頂きました。
歯や歯周組織は、iPS細胞ができる前から、他の幹細胞を使っての再生療法の研究がされていたことを知っていましたので、『iPS細胞でやり易くなって弾みがついただろうな』という程度の印象でしたが、これまで再生不可能とされていた歯髄組織まで再生できたという実験結果を見せて頂いたことは、大きな驚きをもって受け止めました。
歯髄の再生は、まさにiPS細胞がなければできなかっただろうと思いますので、画期的な研究だろうと思います。
しかしこのシンポジウムでもやはり、『若い健康な状態をいかに維持するか』ということに主眼が置かれていて、私が常々考えている『初老期から終末期に向かって、口腔機能をできるだけ維持しながら、いかにして無難に軟着陸させていくか』といった議論は、まったくなされませんでした。 『不老不死』が現実になるならば、それが最良に違いありませんが、実際には、老化による生物としての衰えと終末期は必ずやってまいります。以前よりもお年寄りが健康になったとは言われていても、それは衰えと終末期が十年から二十年ほど先送りされただけであって、むしろ衰えから終末に至る期間は昔よりも長くなっています。
そこの部分をいかにしてクリアするかの歯科医療を考えておかないと、軟着陸どころか、行き着くところまで行っての硬着陸(ハードランディング)しか残されていないということになります。それでは歯科医療として、大切な部分に目をつぶっているだけ、見ないようにしていただけ、と言われても仕方ないように、私には思えるのですが……。
論文発表 (日本顎咬合学会誌『咬み合わせの科学』
平成27年11月25日発行 第35 巻 第 3号)
私の『包括一貫治療システムとしてのコーヌステレスコープ義歯』という考えを、非常によく理解して下さっている先生から、日本顎咬合学会誌に論文を書いてみてはどうかというお誘いを受け、まず包括一貫治療としてのコーヌスの概論を記した論文を書かせて頂きました。
日本ではもちろん、世界的に見ても、『初老期から終末期までを見据えた具体的かつ実践的な治療法』という考えはあまりなく、そういった意味で、私の考え方はユニークなのだろうと思っております。
私のコーヌスに対する考え方は、決して終末期だけを見すえた治療法ではなく、今現在の難症例にもうまく対応しながら、あるいは噛む機能も充分に備えながら、十年後や二十年後に、かなり老化が進んできても無難にうまく対応できますというものです。
今後、そういった老化に向かっての長期経過を記した二本目の論文も書かせて頂くことになっておりますので、またこの場でご紹介させて頂きたいと思っております。
森本剛コーヌス論文1 日本顎咬合学会誌『咬み合わせの科学』平成27年11月25日発行 第35 巻 第 3号 pdfは、ここをクリックしてください
学会レポート (第33回日本顎咬合学会 学術大会・総会)
平成27年6月27日(土)、28日(日)に開催されました第33回日本顎咬合学会 学術大会・総会に参加してまいりました。毎年参加させていただいているこの大会ですが、今回はある先生から依頼されてのポスター発表をさせて頂いたということで、例年とは違った『SPEAKER』としての立場での参加となり、印象深いものがありました。
私が、プロである歯科医師の皆様にお伝えしたいことといえばコーヌスの『包括一貫治療システム』としての利用法のことになるのですが、この考えは、ある程度のコーヌスの経験がある先生には非常に理解して頂きやすいのですが、経験のない先生にはすぐには理解して頂きにくいことであるようです。
というのも、『包括一貫治療』や『総合一貫治療』『生涯一貫治療』という概念は、これまでは理想論としてしか捉えられていなかったので、実際に可能な治療法としての実感を持ちにくいといったところが現実であろうと思われます。
しかし、超高齢社会を迎えつつある日本で、そして誰にでも『老化』や『終末期』は確実に訪れてくるものだという現実を考えたとき、単なる予防法や、あるいはできるだけ歯を残すべきといった『若さを維持する』技術だけでは、高齢によって全身状態が悪化してくる患者様を救うことはできません。 肉体が衰えてくる初老期から終末期にかけて、若さを維持することは理想的なことかもしれませんが、『不老不死』は絵空事でしかありません。
生物として確実に衰えを迎える初老期から終末期にかけて、『いかに快適に、いかに無難に、噛む機能を維持しながら終末期を迎えて頂くか』という具体的なノウハウを考えておかないことには、これからますます超高齢化が進んでいく日本において、歯科医学が皆様の期待に応えることはできないと考えております。
残念ながらこれまでの歯科医学は、『若さや現状を維持するための歯科医学』でしかありませんでした。老化等によって、あるいは何らかの理由によってさらに状態が悪くなってきた場合には、『それはその時に考えるしかない』といった、先を見ていない・見られない技術ばかりで成り立っていました。
私はそれではダメだと思っております。今をできるだけ快適に、そして、先々悪くなってきた時にも、できるだけ肉体的・精神的、さらには経済的な負担が少ない方法を考えておくべきで、それは現在のところ、『包括一貫治療システム』としてのコーヌステレスコープしかないのじゃないかと思っております。
幸いにしてある先生から、『今後もこの日本顎咬合学会において、包括一貫治療システムとしてのコーヌスの考えを広めてほしい』というお言葉を頂いておりますし、論文発表や口演等もさせて頂く予定となっております。どこまで充実した内容になるかは分かりませんが、できるだけのことはさせて頂きたいと思っております。
日本顎咬合学会 平成27年用ポスターのpdfは、ここをクリックして下さい
学会レポート (アイキャストワールド2015)
平成27年5月24日(日)、昨年に続いてのことになりましたが、東京のJA共済ビルカンファレンスホールで開催されました、アイキャストワールド2015に参加してまいりました。
昨年は、ドイツのMrs. Kathleen Geida-Kopschさんが、私ども森本歯科医院でコーヌスに関する講演をして下さることになっておりましたので、そのご挨拶も兼ねての参加でしたが、その際に、このセミナーの熱気に触れて素晴らしいなと思い、今回も参加させていただきたいと思ったわけです。昨年は、主として部分床義歯のパートを拝聴いたしましたので、今回は総義歯の会場を選ばせていただきました。
総義歯では第一人者の一人でいらっしゃる村岡秀明先生のお話は大変興味深く、また講演の進め方や聴衆を引き込む話術についても、さすがにベテランの巧みさを感じ、その意味でも大変勉強になりました。
そして、歯科技工士である菱山実先生の情熱あふれるお話にも、深い感銘を受けました。歯科医師・歯科技工士とも、若手の育成が大きな課題だとされている中、こうした先生が技工部門を牽引して下さるなら、あまり悲観的に考えなくても良いだろうという思いを強くしました。
さらに、前畑香先生のお話は、新進気鋭らしい新たな視点が多く含まれ、こういった手法もあるのかと、考えさせられるものがありました。
このセミナーは、歯科器材メーカーであるi-CASTさんが主催されていて、来年も開催されるとのこと。昨年のMrs. Kathleen Geida-Kopschさんの講演の関係で、スタッフの方の多くとも顔見知りですので、また来年も参加したいなと感じました。
学会レポート (第33回日本接着歯学会学術大会)
平成26年12月13日(土)・14日(日)に、ニチイ学館 神戸ポートアイランドセンターにて開催されました、第33回日本接着歯学会学術大会に参加してまいりました。
風の強い中ではありましたが、日差しはありましたので、さほど寒さを感じることはありませんでした。
接着歯学は、理論通りの性能が発揮されるならば、素晴らしい技術であるに違いはないのですが、実際の臨床上は、必ずと言って良いほど経時的な劣化が見られ、何年か経過していくうちに、失敗、あるいはそれに近い状態に陥ることがしばしばあります。
歯牙への接着技術が開発されて約30年、これまでに多くのレジン本体の物性の改良が重ねられてきましたが、やはり『接着は今一つ信頼が置けない』というのが私の実感でした。
今回、それを裏付けるかのような、『樹脂含浸層のコラーゲン線維網の加水分解が起きている』という研究が発表されたことにより、『これによって、接着歯学の限界が示されたのかもしれない』という思いを強くしました。 すなわち、これまで接着歯学の根幹をなしてきた『樹脂含浸層』のコラーゲン繊維が加水分解されるなら、理論の土台が危うくなったわけで、『コラーゲン線維の加水分解の抑制』という、これまで考えもしなかった課題を解決しないことには、接着歯学は今以上の発展は困難で、臨床的な不確実性を残したまま、ということになります。
研究者の先生たちは、『加水分解の抑制・阻止』という命題を突きつけられたわけで、今後の研究を待ちたいところです。
しかし、水の少ないところでは、接着材料の耐久性は確保されているはずで、今回も発表された『モノブロック構造体』、すなわち失活歯において、根管充填、支台築造、そして最終修復までを一体化して補強するという概念を、いかに確実に行えるかという手法が今後改善されれば、強度的・経時的にかなり良好な結果が得られるはずで、コラーゲンの加水分解の影響をあまり受けない部分での接着歯学活用の考え方として、かなり煮詰まってきたように思えました。
今回の学会は、私の母校である大阪大学歯学部が主管しておりましたし、神戸という近い場所であったということもあって、たくさんの知り合いに出会えて、食事をしながら等々、さまざまに語り合うことができ、たいへん有意義な学会参加となりました。多くの有益な公式・非公式な情報をお教え下さいました皆様に、この場をお借りいたしまして、御礼申し上げます。
学会レポート (第7回日本国際歯科大会)
平成26年10月10日(金)~12日(日)まで、パシフィコ横浜で開催されました、第7回日本国際歯科大会に参加してまいりました。
強風の曇天で、学会の天候としてはあまり良くありませんでしたが、歯科技工士さんや歯科衛生士さんたちのシンポジウム、さらには大規模なデンタルショーも併催されるとあって、かなり盛況な学会となりました。 発表される口演も非常に多く、聴きたい内容はたくさんあったのですが、事前抄録で最も興味をひかれた『生涯を見据えた補綴設計のためのディシジョンメイキング』のセッションに一番期待を込めて、拝聴いたしました。
さまざまに有益なお話ではあったのですが、やはり想像していた通り、歯周病や咬合の再構築、歯冠形態等、個々の分野の『ここに注意すべき』といった議論や抽象論に終始し、私がこれからの歯科医療に必須だと考える『具体的・実践的な生涯一貫治療、包括一貫治療、総合一貫治療のノウハウ』といったお話は聞けなかった、というのが実感でした。
歯科医療は、『今』を確実に治療することは、もはや当然のことであり、『今後、患者様が老化されていくのに対応して、その患者様の終末まで、具体的・実践的にどのように対応していくのか』が、時系列的にプランニングできるような方針がベストだと思っております。
予知性の高い治療とは、まさにそのことだと思っているのですが、『次に悪くなられた時に、どう対応するのか。その次に悪くなられた時にどう対応して、さらには、どのように無難に人生終末を迎えていただくのか』といった観点の議論がほとんど見られないのは、非常に残念なことだと思っております。
しかしながら、『天然歯保存時代の再生療法:その可能性と限界』のセッションでは、難治性の歯周病に対して、『過剰に歯周病反応が起きている個体』という概念が述べられ、それはすなわち免疫学的な考えを抜きにしては語れないという、非常に興味深い発表がありました。 すなわち、時々若年者でも難治性の歯周病があること、加齢に従って、特に五十代の後半以降は、歯周治療への反応性が低下してくること、等を考えれば、さらには歯周病が細菌感染によって起きる炎症であることが分かっている以上、免疫力が絡んでいることは容易に想像がつき、歯周病の専門医の先生が、なぜ免疫力に注目しないのか、私は不思議に思っていました。これまでにも、全身状態にも関係があるだろうとは述べられ、免疫力に何らかの問題があるだろうと言われてきたものの、具体的な治療法に、それが反映されることはありませんでした。
今回、歯周病に対して、具体的で実践的な免疫学的アプローチが示されたことによって、今後、ますますこういった考えや手法が発展していくと確信しておりますので、動向を注意深く見てまいりたいと思っております。
学会レポート (第32回日本顎咬合学会 学術大会・総会)
平成26年6月14日(土)・15日(日)に、東京国際フォーラムで開かれました、第32回日本顎咬合学会学術大会・総会に参加してまいりました。
東京はここ数日、雨が降り続いていたようですが、この2日間は好天に恵まれ、まさに学会日和になりました。
いつもの通り、抄録集で事前に目をつけてあった演題を聴講させていただき、さまざまに学ばせていただきました。
中でも、今里先生の『バイオアクティブ機能を発現するS・PRGフィラー含有材料-予防効果を備えた修復治療におけるその有用性-』は、非常に興味を持って聞かせていただきました。
接着性レジンが開発されたのは、私が歯科医師になった頃でしたが、当時はエナメル質のみの接着しかできず、数年後に象牙質への接着法が開発されてから、臨床的に非常に有用な技術となりました。 しかし、レジンの硬化メカニズム上、重合収縮は止むを得ないものであるし、経年的な材質劣化も避けられず、結果的には、辺縁部の変色や二次カリエスが必ずと言っていいほど起きますので、最適応症とされる歯頚部付近の小さな摩耗程度の場合、『わざわざ治療する必要があるのか?』といった疑問をずっと抱いていました。 5年以上の経過を考えた場合、むしろ治療しない方が良かったと言える症例が非常に多くあるからです。
今里先生が、充填用レジンのこういったマイナス面を解消すべく、長年研究されていたのは存じ上げていましたが、『いよいよ完成の域に達したのかも』という思いを抱かせていただきました。 フィラーから多種のイオンを放出させ、それをリチャージするというシステムを定着させれば、これまでの充填用レジンの弱点を大幅に軽減することができ、ますます有用性は高まるだろうという思いを強くいたしました。
今回の東京出張では、講演等でお世話になっている先生方との重要な打ち合わせの場を持つこともでき、学会会場外でも、大変有意義だったと思っております。
学会レポート (アイキャストワールド2014)
平成26年4月20日(日)、東京のJA共済ビルカンファレンスホールで開催されました、アイキャストワールド2014に参加してまいりました。
これは、この講演会で講師をされるMrs. Kathleen Geida-Kopschさんが、4月23日(水)に私ども森本歯科医院で特別講演をしていただくことになっていましたので、そのご挨拶も兼ねての参加となりました。
Kathleenさんの講演は、もちろん興味深かったのですが、これは当院のホームページの『講演記録』ページに記させて頂くことにして、共演された林大悟先生の『パーシャルデンチャーにおいて、支台歯の工夫を』という考えには、頷かされるものがありました。
また、伴清治先生のCAD/CAM用素材の紹介は、この4月からCAD/CAM用のハイブリッド冠が保険適応になったことから、大変興味深く聞かせていただきました。 しかし、ジルコニアと称されているものにも多くの種類があり、まだまだ研究段階ではあるものの、もう少し研究が進めば充分に実用に耐えるものができてくるかも、という強い期待を抱きました。 ただ、CAD/CAMの場合、形成に丸みを要求されるため、維持力が弱い、すなわち外れやすいという決定的なマイナス面があり、素材の研究と平行して、作成機械の進歩も不可欠だろうという思いは強く残りました。
いずれにせよ、私ども森本歯科医院での特別講演に向けて、Kathleenさんにご挨拶させていただけたことだけでも、非常に意義深い講演会参加となったと思っております。 Kathleenさんの特別講演の詳細は『講演・学会発表』ページへ
学会レポート (平成25年度 日本補綴歯科学会 関西支部総会・学術大会)
平成25年11月23日(土)、24日(日)に大阪歯科大学創立100周年記念館において開催されました平成25年度 日本補綴歯科学会 関西支部総会・学術大会に参加してまいりました。
地方会は若手の登竜門と位置づけられていますので、私は最近はほとんど参加することはないのですが、今回はコーヌスの権威である元東京医科歯科大学の五十嵐順正教授の特別講演があったこともあって、さらにはご依頼いただいていた大阪歯科大学同窓会様のポストグラデュエートコースでの講演関係者が一堂に会することができるとあって、参加させていただきました。
一般口演で興味を引かれたのが、『口唇閉鎖時とスマイル時の顔貌写真に対する注視点分析』でした。 ある程度予測されたことではありますが、口唇閉鎖時は目、スマイル時では口に注視点が行くという納得しやすい結果で、顔貌全体の審美を考える上においても、やはり歯の要素は欠かせないということが裏付けられました。
五十嵐先生の『欠損補綴治療の要諦-長期経過症例から学ぶ』の特別講演は、これ以上ないくらい集中して拝聴いたしました。 コーヌスの基礎になる理論や考え方を改めて学ぶことができただけではなく、コーヌスの長期症例を見せていただけたことで、私の今後の臨床がさらに深くなっただけでなく、『短縮歯列』という概念の科学的な裏付けをしっかりと理解できたことによって、難症例に対する考え方に幅が広がって自信も持てるようになったのではないかと考えています。
また、学会後に行われた懇親会の場で、大阪歯科大学同窓会のポストグラデュエートコース講演会の日程が平成26年7月27日と決定したこと、さらには、偶然お会いした阪大歯学部第一補綴の中村隆志先生とのコーヌスに関する雑談から、阪大歯学部第一補綴学講座内でのセミナー講演(平成26年1月22日)のご依頼も頂けることになり、大変発展性のある有意義な学会参加になったと非常に嬉しい思いをいたしました。
写真は懇親会の場で、向かって右から五十嵐先生、森本、阪大歯学部での恩師である第二補綴学講座元教授の野首孝祠先生。
学会レポート (第58回日本口腔外科学会総会・学術大会)
平成25年10月11日(金)~13日(日)まで福岡国際会議場で開催されました、第58回日本口腔外科学会総会・学術大会に参加してまいりました。5月の補綴学会同様、好天に恵まれた上に、もともと口腔外科出身ですので顔見知りも多く、楽しい学会参加となりました。
学術的なことで申し上げれば、『ワークショップ4 下顎智歯抜歯後の神経麻痺の回避法』の4口演は、新たな発見の意味においても、また復習の意味においても、得るものが多いセッションとなりました。
外科の基本は、『明視・直達』、すなわち、よく見える状態を作り出して、確実に器具を到達させることにありますし、特に口腔内は、ファイバースコープ等を使わないでもこれが可能であるため、今でも『明視・直達』が効果的であるには違いありません。 しかし、明視・直達しようと思えば、患部を大きく切り開く必要があり、術後の炎症は非常に強く起きて、腫れや開口障害が数週間ほど続いてしまいます。学術的・教科書的にはこれが正しいのだとしても、私のような町中の開業医としては、このように強く炎症の起きる方法は躊躇してしまうところですし、逆に大きく切り開かずに行えば、このワークショップでの一つのテーマである、下顎管、下歯槽神経、舌神経を傷害してしまう危険性が増してしまいます。
そのようなことを考えた時に、3席目の『下歯槽神経障害を回避するための 2回法 下顎智歯抜歯システム』は、われわれ町中の臨床家にとって、有効な方法かもしれないと思いました。 つまり、1度に抜歯してしまわずに、3カ月ほどの期間を空けての2回法で行えば、歯の移動も期待でき、組織的にもゆとりができてくるので、大過なく抜歯を終えることができる可能性が高くなると思われます。
しかし、この方法は、まだ広く認知されておらず、健康保険では適応とされていないため、実際に行うのは、かなり無理があることも事実で、日進月歩の学術的な進歩に、保険が追いついていないといった典型例かもしれないと思いました。
また今回は、阪大での同級生でもある九州大学口腔外科の森悦秀教授と、平成26年2月に日本経営様でコラボで講演させていただく件について、お互いに何を語りたいのかの細部にわたった意見交換ができたことも、大きな収穫だったと思っております。
学会レポート (第31回日本顎咬合学会学術大会・総会)
平成25年6月29日(土)・30日(日)に、東京国際フォーラムで開催されました、第31回日本顎咬合学会学術大会・総会に参加してまいりました。
この学会は、ほぼ毎年参加させていただいていて、単位数を充足し、5月に行われた認定医試験を受験していましたので、合格発表の場という位置づけでもありました。 無事に合格できていたので、ほっと一息という感があったのですが、今回の顎咬合学会は、発表の内容にも、充実したものが多かったように思えました。
特に印象に残ったのが、『粘膜免疫とプロバイオティクスについて』の講演で、腸管に代表される粘膜免疫機構は、実は口腔粘膜にもある程度は存在することや、腸内細菌との共生の破綻が病気を招くことが述べられ、プロバイオティクスによる腸内環境の改善が、歯周病でさえも改善させる可能性を示唆され、歯周病に対する新たなアプローチになるかもしれないと感じました。
現実問題として、『難治性歯周病』と言われているものの中には、免疫機構に問題のあるものがかなりあるだろうと思っていますので、こうした免疫力からのアプローチなくして、歯周病の本当の解決はないだろうと考えていて、こうした流れに、私としては大きな期待を寄せたいところです。
また、『守るパーシャル・デンチャー、攻めるパーシャル・デンチャー』の講演には、大きく共感させられるものがありました。この講演でも述べられていた通り、患者様のご希望を尊重しない歯科医療に患者様が満足していただけるはずがなく、『抜いてインプラントにする』今の風潮に、どれだけの患者様の本音としてのご満足があるのか、疑わしいところです。
しかし、100年も前から成立している補綴理論に固執することにも疑問で、コーヌスに代表されるような新たな歯科技術に対して、柔軟に過去の理論をアレンジしようとする発想がないから、歯科医療の進歩が阻害されているといった感もぬぐえませんでした。
さまざまに考えさせられることの多かった有意義な学会参加でしたし、『咬みあわせ認定医』をいただけたこともありますので、今後も積極的に参加させていただきたいと思っております。
学会レポート (日本補綴歯科学会 第122回学術大会)
平成25年5月18日(土)・19日(日)に福岡国際会議場で開催されました、日本補綴歯科学会第122回学術大会に参加してまいりました。
快適な気候に恵まれ、大規模な学会らしく華やかに開催されたこの学会においても、多くのことを学ばせていただくことができました。
とりわけ感慨深く思ったのが、顎関節症に対する研究で、昨年11月の日本歯科医学会総会同様、顎関節症に対する考え方が、確実に変わってきていることを実感いたしました。
以前は、咬合(噛み合わせ)そのものに何らかの不調があるから顎関節症が起きるのだという意見に支配されていて、咬合診断という名のもと、私にとっては首をかしげざるを得ない咬合調整が積極的に行われ、またスプリントも、あまり違いがあると思えない各種タイプの中で、どれが適切かといった議論にばかり終始していました。 あるいは、割りばしを噛めば治る、おしゃぶりタイプのものがいい、脊椎や骨盤の矯正が必要、とかいったさまざまな意見や治療法が流布されていて、しかもそれらがすべて効果的であるとのことだったので、『この疾患は一体どうなっているんだ。本質は別のところにあるんじゃないのか』という感をぬぐえませんでした。
私自身は、7~8年前ぐらいに、『結局、どれも顎位を少し変えているに過ぎないんじゃないのか? とすれば、神経筋機構が暴走しての筋肉痛が本質的な問題だろう』といった考えにいたり、『覚醒時にはできるだけ筋肉をほぐし、睡眠時の姿勢を変え続ける』という考えのもと、各種筋肉弛緩法や睡眠時の枕替え法をご指導してきて、かなりの効果をあげている思っております。
今回、『顎関節症 円板転位復位型に対するスプリントの併用効果』の口演において、スプリントの有効性が否定されたこと、『顎関節症患者の加齢に伴う疼痛強度の変化』のポスター発表によって、筋肉の強さとの関連が確認されたことによって、私の顎関節症治療に対する考え方が補強されたと認識していて、私の考え方が有効であるエビデンスをできるだけ集めるようにしていきたいものだと思うようになりました。
博多の街はコンパクトながら、結構お洒落で美食も豊富で、好きな街の一つです。また、いつものように友人と旧交を温められたことも、大きな収穫だったと思っていて、意義深い学会参加となりました。
学会レポート (第22回日本歯科医学会総会)
平成24年11月9日(金)~11日(日)まで、大阪国際会議場で開催されました第22回日本歯科医学会総会に参加してまいりました。
9日は講演数も少なく、また診療を休めなかったことから、10日と11日のみの参加となりました。 いつもの通り、抄録集の中からあらかじめピックアップしておいたご講演について、興味深く学ばせていただくことができました。
まず印象に残ったのが、東京大学社会予防疫学の佐々木智先生の『「噛む、食べる」という行動と健康―歯科疫学と栄養疫学との視点から―』というご講演でした。
ビタミンCやビタミンE、カロテノイド類といった栄養素の血中濃度が歯周病の発生に有意に関連していることが日米両国から報告されている事実や、噛む力の強い人との肥満度との関連、さらにはそれらから導き出される『栄養疫学』については、私がかねてから感じていた歯周病治療に対する疑問を後押ししてくれるものとなりました。 すなわち、現在の歯周病の治療は、もっぱらプラークや歯石除去の視点から語られることが多い中で、つまり原因論からのみ議論されていることが多い中で、宿主側の因子、つまり患者様の体の状態がかなり大きく影響しているのではないかといった私の考えに非常に近いものがありました。
歯周病の原因が細菌によるものであることは明らかであるにしても、それによる炎症は宿主側の免疫力との兼ね合いで起きることは基礎医学的な常識であり、体内常在菌としての口腔内細菌を完全に排除できないことが明らかである以上、宿主側の抵抗力・免疫力を考慮に入れていないことは、歯周病を一側面からしか見ていないに過ぎないと思っております。
宿主因子の関与については、実はさまざまな方面から指摘されているのですが、どういうわけか、歯周病の専門家の先生方は、原因論にのみ目を奪われておられているようで、遺伝的要素・栄養学的要素を含めた宿主側の因子との絡みで捉えていかないことには、『歯だけを見て、人を診ていない』といった批判が出てくる可能性がさらに高まってくるのではないかと感じました。
次に大変おもしろく思ったのが、『口が開かない! 診断・治療の最前線』と題された開口障害に関するシンポジウムでした。 10年ほど前までの、咬合調整やスプリント主体の顎関節症治療論は、完全に過去のものとなり、顎関節症自体の概念が大きく変化してきた中で、やはり難治性の顎関節症が存在していることも確かなことで、それに対する考え方もさまざまに違うものだなぁと感じました。
将来的には、顎関節症自体の病態解明がますます進んで行くであろう中で、こういった開口障害の原因論や治療論ももっと整備されていくことはほぼ確実で、その時には、このシンポジウムで問題にされた開口障害は、顎関節症の一症状といった概念から離れて、顎関節症とは別の疾患と捉えられる可能性が高いと感じました。 あるいは、顎関節症という疾患自体がさらに解明されて、いくつもの病態の総称でしかなかったと考えられる時代が来るのではないかとさえ感じました。
久々に大阪で開かれた日本歯科医学会総会は、今後の歯科医療の1つの方向性を見せてくれた学会として、今後も強く印象に残るような気がしています。
学会レポート (平成24年 第42回日本口腔インプラント学会)
平成24年9月21日(金)~23日(日)に大阪国際会議場で開催されました第42回日本口腔インプラント学会学術大会に参加してまいりました。
インプラントにはあまり肯定的ではない私ですが、最新の情報や技術は知っておく必要があるため、数年おきに、こういったインプラントを主体とした学会にも参加しております。
今回面白いと思ったのは、『可撤式電鋳ブリッジにジルコニア上部構造フレームの応用』という研究発表でした。
インプラントの長期メンテナンスには可撤式の上部構造が必須と思われる中、インプラント+オーバーデンチャーに期待する声が高く、オーバーデンチャーの代表格であるコーヌスがこれまで有力視されてきましたが、通常のコーヌスは微少な歯牙の移動を前提としていますので、私はたぶんうまくいかないだろうと思っていました。
しかし、この『ジルコニアの内冠』+『電鋳を施した外冠』の組み合わせならば、歯牙の移動に期待しないですむ可能性が高く、維持力も審美性も期待できるので、インプラント+オーバーデンチャーという概念の有力候補になると思われ、今後の動きに注目したいところです。(これがうまくいくならば、私もインプラントを始めるかもしれません)
また最近は、インプラントの基礎研究もずいぶん多くなってきているように思われ、ようやく、科学的にインプラントの議論ができる状態になってきたかもと思いました。 しかし、『国産HA-Coatインプラント1518本の長期的(17年間)調査 HA-coat234本とTi222本の11年比較研究』では、ずいぶん昔に否定されたはずのハイドロキシアパタイト(HA)でのインプラントの経過成績が、今の主流のチタン(Ti)と変わらないといった、じゃぁ今までのインプラント研究は何だったの? と言いたくなるような発表もありました。
また、トラブルも相変わらず多発しているようで、『インプラント関連の事故・紛争・苦情・相談事例に関する検討-(埼玉県)歯科医師会医事処理委員会で19年間に扱った事例-』では、128例の内、裁判となったのはわずか3例と、マスコミ等で取り上げられているのは、本当に氷山の一角に過ぎないのだという認識を、また新たにしました。
いずれにせよ、『電鋳をしたジルコニア外冠』という注目できる方法を見つけたことだけでも、この学会に参加した意義は充分にあったと思っております。
学会レポート (日本歯科医師会 第40回産業医学講習会)
平成24年8月30日(木)~9月1日(土)まで、東京九段の日本歯科医師会館で開催されました、第40回産業医学講習会(厚生労働大臣が指定する労働衛生コンサルタント講習会)に参加してまいりました。
これは、平成23年に取得した日本歯科医師会認定の産業歯科医のステップアップコースになっていて、国家資格である労働衛生コンサルタントを目指すための講習会です。子育てが終わって、社会に何かお返しができればという思いが発端となっていますが、歯科医師限定の産業歯科医よりも、医科や産業界の方々と同じステージで社会に貢献できるぶん、やりがいもあるだろうと考えて、チャレンジすることにいたしました。
この講習を経て、厚生労働大臣が行う労働衛生コンサルタント試験を受けることになったわけですが、さまざまに多忙な中、効率的な受験勉強を目指した結果、平成25年1月16日(水)に行われた本試験において、約40%の合格率の中、無事に合格を果たすことができ、平成25年4月5日付、『保-第5635号』をもって、労働安全衛生法に基づいた厚生労働大臣指定の労働衛生コンサルタントとして、正式に登録して頂きました。
なってみて驚いたことは、労働衛生コンサルタントとしての業務の奥深さですが、今後もさまざまな講習会を受講して、地元の中小企業の皆様のお役に立つことができるように、研修を重ねてまいりたいと思っております。
学会レポート (第30回日本顎咬合学会学術大会)
平成24年6月9日(土)~6月10日(日)に東京国際フォーラムで開催されました、第30回日本顎咬合学会学術大会に参加してまいりました。
毎年のように参加している顎咬合学会ですが、今年は第30回という記念大会ですので、会員以外の参加もOKということで、例年よりも参加人数が多いように感じました。
いつものように、抄録集の中から、あらかじめ狙いをつけてあった講演を聞かせていただきました。『これからの時代を見据えた歯科診療哲学とは』や『審美と機能の調和を考える』のセッションも興味深く拝聴させていただきましたが、特に印象に残ったのは、『各種パーシャルデンチャーによる機能回復』のセッションでした。
俵木先生、黒岩先生、亀田先生のそれぞれのご講演が多くの示唆に富んでいたことはもちろんのことでしたが、講演後の、座長の稲葉先生も含めたディスカッションは、予定の30分を大幅に超えて1時間ほどにもなり、それぞれの先生方の考え方がこれほどまでに違うのかと、驚かされました。 オルタードキャスト法という一般的な概念でさえ、4人の先生の捉え方は全く違い、それぞれの先生が苦笑気味にそれぞれの意見を述べられるほどでした。
患者様に対する治療方法がそれぞれに違えば、共通概念と思える手法に対する受け止め方さえも違ってくるものなのか、共通概念の捉え方が違うから治療方法が変わってくるのか。どちらかは分かりませんが、治療レベルが高い場合には、どれが正解という訳ではなく、どれもが正解と考えるべきで、どの考え方がベストということはないのだろうとの認識を新たにしました。
しかし、それぞれに得意とする手法や考え方があるとしても、他の歯科医師のやり方を知って議論を重ねることで、それぞれに切磋琢磨できることは確実で、私も高名な先生の考え方に首をひねることが多少はあったものの、それぞれのご講演で新たな発見や気づきを多く与えていただき、得ることの多い学会参加となりました。
学会レポート (第63回近畿北陸地区歯科医学大会)
平成23年11月6日(日)に滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで開催されました、第63回近畿北陸地区歯科医学大会に参加してまいりました。大津は秋らしく清々しいお天気で、地区大会にしては人出も多く、華やかな学会となりました。
数ある講演の中から、あらかじめ狙いをつけてあった『根尖性歯周炎から続発したビスフォスフォネート関連下顎骨骨髄炎の2例』と『糖尿病患者の歯周病罹患状態と糖尿病との関係』に関しては、特に興味深く聞かせていただきました。
骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移等の骨病変に使用されるビスフォスフォネート製剤(BP製剤)は、近年になって、逆に顎骨に壊死や炎症を起こしやすいことが分かってきていますが、まだ充分な予防法や治療法が確立されておらず、我々歯科医師が歯を治療させていただくに際に、充分に注意しなければならないことが明らかとなってきております。
今回の講演では、これまで言われてまいりました抜歯のみならず、根尖病巣に対する根管治療においても、骨髄炎や顎骨壊死が起こり得るとのことで、もしもBP製剤を服用されている患者様に対する根管治療の経過が悪い場合は、早めにそれを疑った対処をしなければならないことが分かりました。 また、糖尿病と歯周病に密接な関連があることは、これまでも歯科医学的には常識となっていましたが、今回の講演で、患者様にそういった認識が浸透していないために、口腔のケアがおろそかになり、病状が悪化している可能性が高いことが明らかになりました。
当院では、糖尿病の患者様には特に、口腔内の状況を良くしておくことが重要だと申し上げていますが、社会全体として、そのことをもっと認識していただかなければならないと感じ、我々歯科界全体の問題なのだろうと思いました。
今回は、地方部会なので1日だけの開催と日数が短く、出会う同級生や友人も少なかったのですが、それでも久しぶりに出会えた同級生や友人も何人かいて、楽しい学会参加となりました。
学会レポート (第3回 国際歯科シンポジウム)
平成23年10月22日(土)~10月23日(日)に東京国際フォーラムで開催されました、第3回国際歯科シンポジウムに参加してまいりました。
土曜の早朝に大阪を出るときは大雨でしたが、東京に着くと曇天、翌日の日曜日は快晴と、雨具の始末に困る学会参加となりました。
メインテーマの『これからの歯科医療の姿を考える』に則してか、今回のシンポジウムは、経年経過・長期経過を論じた講演が多かったように感じました。 なかなか面白そうなテーマが多かったのですが、いつものように事前抄録でチェックさせていただいていた講演を興味深く拝聴いたしました。
中でも、『欠損補綴の咬合と経年的対応』と『長期臨床観察から見えること~考える歯科臨床・必要な技術』、さらには、『「考える保存・歯内療法」実践のための3つの視点~ミクロへの視点・マクロへの視点・人間への視点』は、私のような開業医にとって、いろいろと考えさせられるご講演となりました。
かつての、絶対不変とされた中心位を核とするナソロジー理論が破綻し、1本1本の歯の状況はもちろん、充分に歯が健全であれば長期間にわたって安定しているように見える咬合でさえも、実際は経年的にどんどん変化していくことが明らかになってきている現在の歯科医療において、長期経過を予測しないままでの治療など、ほとんど意味はなく、最低でも10年、さらにはできるだけ長期を見すえての治療計画が理想であることは申すまでもありません。
しかし、そうであろうとすればするほど、過去の自らの症例の反省すべき所は反省し、どうすれば長期の変化に対応できたかを常に検証していく必要があると思われます。また、長期的な安定を得るためには、患者様一人ひとりの今現在の状況を的確に把握し、口腔内の長期変化はもちろんのこと、年齢も加味した全身的な長期予測を考えておかねばならないことを、今回のシンポジウムでは再認識させていただきました。
あいにくの天候不順ではありましたが、得るところの多いシンポジウム参加となりました。
学会レポート (第39回 産業歯科医研修会)
平成23年8月28日(日)に東京九段の日本歯科医師会館で開催されました、第39回産業歯科医研修会に参加してまいりました。
私はこれまで、良き歯科医師であることと同時に、良き家庭人でもあることも重要視してまいりましたが、子供たちがほぼ独立いたしましたので、最近では家庭サービスに多くの時間をついやす必要が少なくなってまいりました。
そこで、これまでお世話になった社会に、何らかの形でもっと恩返しがしたいという思いから、今回の産業歯科医研修会への参加となりました。
産業歯科医というのは、工場等で使用する薬品類によって歯や口の健康が害されることを防ぐための検診やアドバイスを行う役割を担っております。虫歯が口の中に常在している細菌によって作られる酸によって引き起こされることはもはや常識になっておりますが、硫酸であれ塩酸であれ、工場等でよく使用される酸の影響で、歯が虫歯と同じように冒されてしまうことも、かなり昔から知られています。また、酸に限らず、アルカリ性の物質やその他の薬品類が、歯肉等に悪影響を及ぼすことも、しだいに明らかになってきております。
このようなことから、ある一定以上の規模や業種の工場では、産業歯科医よる歯科検診やアドバイスを受けて改善を図ることが法で義務づけられており、日本歯科医師会では厚生労働省からの委託を受けて、産業歯科医の育成を行っているわけです。
私ども森本歯科医院があります大阪市平野区は、日本を代表する中小企業や製造工場群を有する東大阪市や八尾市と同じ地域ですので、平野区にもそういった工場がいくつもございます。 産業歯科医は、単なる歯科医師としての知識のみならず、工業や製造業に関しての幅広い知識が求められ、かなり奥の深い分野であることは間違いなく、さらなる研修が必要であることは申し上げるまでもございません。
しかし、こうした地域で開業させていただいていて、これまでにも地元の中小企業や工場の関係者の方々にも多数ご来院いただいております以上、こうした地元の方々に少しでも恩返しをさせていただくべきだろうと考えております。
今後は、できるだけの多くの研修を重ねて、幅広い知識を持った産業歯科医になれるよう、がんばってまいりたいと思っております。
学会レポート (日本顎咬合学会 2011年 第29回学術大会)
平成23年6月11日(土)~12日(日)に東京国際フォーラムで開催されました、日本顎咬合学会 2011年 第29回学術大会・総会に参加してまいりました。
原発事故による節電に、あいにくの曇天も重なってか、東京はいつもよりも暗い印象でしたが、顎咬合学会は例年通り、盛大に催されました。
たくさんある発表会場のすべてを見ることはできませんので、いつものように、事前抄録でチェックしておいた講演を中心に聴かせていただきました。
まず印象に残ったのが、稲葉繁先生の『予防補綴に最適なテレスコープシステム』でした。根管治療や歯周病の治療を行いながら、崩壊してしまった咬合を再構築し、長期にわたって快適に食生活を営んでいただきつつ、老化による衰えにも柔軟に対応できる治療法は、やはりコーヌステレスコープシステムしかないだろうという思いを深くいたしました。
また、平井順先生の『エンドの基本をもう一度考察する 臨床で守るべき重要なポイントとは』も、興味深く聴かせていただきました。私のような一般開業医は、すべての分野の技術で合格点を上回っておく必要がありますが、根管治療は、その中でも特に重要で、歯周や補綴との組み合わせのキーポイントとなるべき技術であることを再確認させていただきました。
さらに、小川洋一先生の『審美と咬合を両立するための治療指針』では、顔貌全体を考慮した審美性が重要で、そのためには、患者様のご要望をよくお伺いすることはもちろんのこと、患者様との日常の会話等から得られる口の動きや歯の見え方も充分に考慮しておかなければならないことを、再認識させていただきました。 その他、数多くの発表から、さまざまに役立つ知識やヒントを与えていただくことができました。また来年も同じ時期に同じように開催されるようですので、ぜひとも参加させていただきたいと思っております。
今回もまた、何人かの同級生や知人に出会い、さまざまに言葉を交わしての楽しい時間を過ごすことができました。学会という時間に余裕のある状況ならではの耳寄りな情報や有益な知識を授けて下さった皆様に、感謝申し上げます。
学会レポート (第6回 日本国際歯科大会 2010年 )
平成22年10月8日(金)~10日(日)にパシフィコ横浜で開催されました、第6回 日本国際歯科大会に参加してまいりました。
8日(金)は診療を休むことができず、9日(土)・10日(日)だけの参加となってしまいましたが、雨模様の天候にもかかわらず、たくさんの参加者でにぎわっていました。特に10日(日)は、10ほどもある講演会場はもちろん、参加者を収容しきれないと見越してのビデオ放映会場までが満員で、講演を聞くのに苦労するほどでした。
講演内容で特に興味をひかれたのが、ロマリンダ大学のハーブランソン先生の『根尖病変への戦略:何が有効か?』の講演で、根管形態の三次元的な複雑さを改めて認識させられ、根管治療の難しさ・奥の深さを痛感させられました。
しかし、抜去歯牙でいくら根管系の複雑さを議論しても臨床上の諸問題の解決につながるとは思えず、通常の根管治療で治療が困難な歯は、現状ではやはり『再植による歯根端切除』に頼るしかないのかな、と感じました。
また、九州大学の古谷野教授による『顎関節症の病因論と治療に関する最近の概念』についても、興味深く聞かせていただきました。 顎関節症に対する考え方がどんどん変化している中、やはり安易な咬合調整は避けるべきだとの考えをお聞きし、まさに私が以前から考えていたことと同じだと、大変勇気づけられました。 むしろ、極端な形態不良の場合は別として、安易な咬合調整は顎関節症をより難治性にしている可能性があるという以前からの私の考え方が、近い将来、こうした権威のある先生によって裏付けられるかも知れないという期待を抱いてしまいました。
さらに、スウェーデンのヨーテボリ大学のカリソン先生による顎関節症の最新の考え方も、私の今後の顎関節症の対応に、大変役立つものだと感じました。
そのほか、ここ数年大きな問題になっているビスフォスフォネートによる顎骨壊死関連で、マイアミ大学ミラー医学部のマークス教授や、九州歯科大の福田教授による講演で、多大な知識を与えていただきました。この問題は、歯科医師としてしっかりとした知識を持っておかねばならないことはもちろんのことですが、ビスフォスフォネートに代わる薬剤の開発や、効果的な対応法など、早急に解決策を見出していただかなければならない問題だと痛感しました。
なお、今回もたくさんの同級生や知人に出会い、楽しい時間を過ごすことができました。学会による講演では得ることができない貴重な情報や知識を授けて下さった皆様にも感謝申し上げます。
学会レポート (日本顎咬合学会 2010年 第28回学術大会)
平成22年6月12日(土)~13日(日)に東京国際フォーラムで開催されました、日本顎咬合学会 2010年 第28回学術大会に参加してまいりました。この学会には毎年のように参加していますが、今年はいつものような蒸し暑さを感じることもなく、快適な学会参加となりました。
東京の中心地で、毎年同じ時期に同じ場所で開かれる学会とあって、規模の大きい学会の一つですが、今年は特に参加者が多かったような気がしました。 十ほどもあった発表会場のすべてを回ることはできませんので、事前に抄録集でチェックしておいた講演や発表を、できるだけ多く聴かせていただきました。
中でも、すぐにでも役立ちそうに思ったのが、『最高の接着:材料選択、歯の切削法及び使用法』で、さまざまな修復物を長期にお口の中に安定させておくための最新の知識や技術を学ばせていただきました。
また、私が以前から悩まされていた過剰な咬合力の問題に対しては、『オーバーロード:過重による天然歯と修復物のダメージの臨床像』や『力が関与する様々な病体像』といった講演から、多くの示唆を与えていただきました。
過剰咬合力問題は、ストレスの多い現代社会や高齢化、さらには歯科医学の進歩がもたらした、新たな歯科医学の重大なテーマではないかと考えていますが、それだけに複雑で、簡単には解決できない問題だろうという思いを強くいたしました。 精神医学と歯科医学の連携、歯科医学のブレークスルー的な進歩がたぶん必要で、それが充分に達成されていない現時点では、歯科医師としてできることは、マウスピース等の装置による歯の保護が現実的な解決策ではないかとの思いを強くいたしました。
この学会は幅広いテーマを扱っていて、大変役立つ学会だと考えています。また来年も参加したいと思っております。
学会レポート (日本咬合学会 2010年 認定セミナー・講演会)
平成22年4月25日(日)に、東京駅前のサピアタワービルで開催されました、日本咬合学会の認定セミナー・講演会に参加してまいりました。この学会は、規模はあまり大きくありませんので、それだけに、演者との距離も近く、堅苦しさの少ない、アットホームな感じで進められました。
咬合の重要性は、われわれ歯科医師のだれもが認識していることですが、私ども森本歯科医院の場合、受診された時点で、自覚症状はないけれども、すでに異常な咬合状態である患者様も多く、理想的な状態に回復しようとすれば、かなり大がかりな治療が必要なこともあり、どこまで治療すべきなのか、という問題に悩まされることが多い分野です。
今回、咬合と全身状態との関連に関する講演がかなりありましたが、われわれ歯科医師が歯や口のまわり以外の部位をくわしく調べることには限界がありますので、推測はできても明確なエビデンス(証明)が不十分なことが多く(そうならざるを得ない)、やはりむずかしい分野だなと感じました。
しかし、かつてのナソロジー理論以来、咬合論は着実に進歩していて、かなり科学的に解明できつつありますので、確実で使いやすい検査法が開発されれば、しっかりとしたエビデンスをふまえた歯科治療が可能になるだろうと思いましたし、それは、けっこう近い将来のことかもしれないと感じました。
また、学会会長で、大阪大学名誉教授である丸山剛郎先生は、私の学生時代の恩師でもありますので、親しくお声をかけていただいて、昔話に花を咲かせ、左のようにツーショットの写真まで撮らせていただくことができました。 丸山名誉教授の相変わらずのバイタリティーぶりに久しぶりに触れさせていただいて、うれしくもあり、感心もし、私もまだまだ老け込むわけにはいかないなと、痛感させていただきました。
最新の咬合論を勉強させていただけたことはもちろんのこと、丸山名誉教授から新たなエネルギーをいただけたことも、今回の学会参加の大きな収穫になったと感じております。
学会レポート (日本歯科審美学会 2009年 第20回学術大会)
平成21年9月19日(土)~20日(日)に、東京の品川区立総合区民会館(きゅりあん)で開催されました、日本歯科審美学会 第20回学術大会に参加してまいりました。
『審美歯科における全部床義歯製作のワンポイント』『歯頚部コンポジットレジン修復に役立つサービカルフェンス』『審美修復治療成功の鍵:診査・診断の重要性について』等、非常に参考になる、すぐにでも役に立ちそうな発表が多数ありました。
また、『無歯顎者の顔貌評定に対する全部床義歯の影響-歯科医師による評価-』では、審美性に関する客観的な判断は、実際上は非常に困難であるとの研究で、歯科治療の難しさや奥の深さを、あらためて考えさせられました。
審美性の追求、つまり少しでも美しくしようとすることは、かなりの部分が主観に影響されることでもあり、患者様の思いを、いかにして歯科医療側がくみとっていくのかに、大きく左右されると思います。やはり少しでも時間的に余裕のある診療をさせていただいて、できるだけ患者様とのコミュニケーションを深くとりながら、治療を進めさせていただくしかないのかな、との結論に達しました。
さらに今回の学会で非常に強く印象に残ったことは、先輩のS先生やI先生に、たいへん興味深いお話を聞かせていただいたことでした。 もはや重鎮となられた感のある先生方から、普段はめったに耳にすることができないような深い話を、夜のふけるのも忘れて、じっくりと腰を落ち着けて聞かせていただけたことは、学会場での学術的な勉強以上に役に立ったかも、と感じております。
こういったことも、学会に参加することの大きな副産物だと思っております。さまざまな意味で、非常に有意義な学会参加となりました。S先生とI先生には、この場をお借りして、お礼申し上げます。
学会レポート (日本顎咬合学会 2009年 第27回学術大会)
平成21年6月20日(土)~21日(日)に東京国際フォーラムで開催されました、日本顎咬合学会 2009年 第27回学術大会に参加してまいりました。先々週の補綴学会とは打って変わって、梅雨空の中での開催となり、蒸し暑さを感じながらの、学会参加となりました。
数多くの発表に接した中で、特に興味をひかれたのが、一般口演の『歯根破折の発生を防ぐための対策(失活歯のMinimal Interventionと支台築造の実際)』でした。 私も以前から歯根破折には悩まされていたので、ファイバーポストを使った支台築造で歯根破折を少なくできる可能性に注目していたのですが、維持力が弱いという弱点があったので、使うことをためらってきました。
しかしこの口演で、破折が少なくなるという明確な実験データが示されただけでなく、さまざまなメーカーがファイバーポストを発売し始め、維持力強化のためにアンダーカットをつけたりといった改良もなされ、初期のファイバーポストに比べるとかなり良くなってきていることが分かりましたので、当院でもそろそろ使い始めるべきかな、と感じました。
しかし、まだ維持力が弱いといった問題点は残されているようで、口演でも述べられていたように、症例を選んで使うことも、こういう新しい素材を使う場合には必要だろうと考えております。 その他、『コーヌスクローネ義歯で補綴した1症例』では、インプラントを使わないで安定の良い入れ歯を作るためにコーヌスを選ばれていて、インプラントの長期予後に多くの不安がある以上、やはりコーヌスが無難な選択ではないかと思いました。
さらに、『総義歯吸着への7つのステップ』や『治療用義歯法から考えた下顎総義歯の吸着形態』といった発表も、興味深く聴かせていただきました。
この学会は、毎年同じ時期に同じ会場で行われるため、予定が立てやすく、また来年も参加したいと考えております。
学会レポート (日本補綴歯科学会 2009年 第118回学術大会)
平成21年6月5日(金)~7日(日)に国立京都国際会館で開催されました、日本補綴歯科学会第118回学術大会に参加してまいりました。
真夏のような日差しが照りつけた暑い中での開催となりましたが、どの発表会場もかなりの盛況で、さすがは伝統ある補綴歯科学会と、規模の大きさをあらためて感じさせられました。
目当てにしていた発表は、それぞれに充実した内容でしたが、特に興味をひかれたのは、『課題口演:補綴臨床疫学』の『フルバランスドおよびリンガライズドオクルージョンの咀嚼機能に関する臨床試験』でした。
私の診療テーマの一つでもある総義歯の安定には、やはりリンガライズドオクルージョンが有利であることが裏付けられた形となりましたが、質疑応答でも話題に出たように、さまざまな食物に対する咀嚼能率にどの程度の差があるのか、の研究が待たれるところだと思います。
また、ポスター発表の『吸引成形後のマウスガードシートの厚みに関する研究-シート材の色による影響』は、たいへん面白い研究だと感じました。 これまで私は、マウスガードの色のことなどまったく気にしていませんでしたが、この研究によって、濃い色の方が熱吸収率が高く、軟化率も高いので、シートは薄くなるものの精度は高くなるということを認識させていただきましたので、今後は、症例に応じて色を使い分けていこうと思っています。
新しい技術として注目されているジルコニアについては、数多くの研究発表がありましたが、金属アレルギーの患者様には適していても、やはりまだ、強度・審美性ともに充分ではないようで、10年、20年と長期間の使用を期待するなら、やはりメタルボンドが無難だろうなと感じました。
今回の学会でも、何人もの知り合いに出会い、それぞれに頑張っておられる状況をお聞きし、大変良いモチベーションになりました。その中でも、特に印象深かったのは、大阪大学歯学部でのクラブの後輩で、この春に卒業し、歯科医師として歩み始めているK君と出会ったことでした。 前に会った時は学生学生していたのに、今やすっかり社会人らしくなって、スーツ姿のK君を見た時、最初は誰だか分からないほどでした。私のような者をも先輩として立ててくれ、フレッシュマンらしい希望と意欲が感じられ、うれしく頼もしい思いをさせていただきました。(写真も、K君が撮してくれたものです)
私も、これからも初心を忘れず、K君のような若々しい前向きな姿勢で、臨床も研修も、頑張っていきたいものだと感じました。暑い中での学会でしたが、久しぶりにK君と会えたことも含めて、非常に有意義な学会参加だったと思っております。
学会レポート (日本歯科医学会 2008年 第21回総会)
平成20年11月14日(金)~16日(日)に横浜の『パシフィコ横浜』で開催されました、第21回日本歯科医学会総会に参加してまいりました。
金曜日は、各会場にまだ空席もあり、ある程度の余裕を持って講演を聴くことができましたが、土曜と日曜は、十ほどある会場のほとんどが、ほぼ満席で、大盛況の学会でした。
特に興味をひかれたのが、国際セッションシンポジウム④の『難治性歯痛のメカニズム、診断、および治療』で、歯痛と神経原性疼痛との鑑別には、基礎医学の知識がかなり必要で、大阪大学歯学部在学中や口腔外科在籍時に学んだことが、この講演を理解する上で、ずいぶん役に立ちました。
超満員だったシンポジウム⑩の、『インプラント治療の最前線』では、やはりまだインプラントにはさまざまな失敗があるのだな、との思いを新たにしました。
シンポジウム⑮の『歯内療法の最前線』も、非常に興味深く聴かせていただきましたが、私も以前から頭を痛めている歯根破折の問題は、高名な先生が修復されても、やはり数年で再破折してくることが多いようで、「うちと同程度か……」と、少しホッとしたり、かなりガッカリしたりもしました。
さらに、ポスターセッションでは、ここ数年言われていた、『抜歯において抗血栓療法は中止する必要はない』というテーマを、豊富な症例と、対処の方法を示していただいたことで、私も充分に納得できました。 これまでは、バイアスピリンやワーファリンを中止してから抜歯をしていましたが、今後は、これらの薬剤の休薬なしで、抜歯や外科処置を行っていきたいと思っております。
また、学会の一番の楽しみは、旧交をあたためることができることです。今回も、たくさんの阪大歯学部の先輩や同級生、後輩に出会うことができました。ほとんどが立ち話で、数分の会話しかできませんでしたが、数人の方とは、食事をしながら話し込むことができて、たいへん楽しい思いをしました。 横浜をあとにする頃には日も暮れ、小雨も降っていましたが、「みんな、それぞれに頑張ってるんやなぁ」という思いが、新たなモチベーションとなり、たいへん有意義な学会参加だったと思っております。
(※上記学会レポートは、主として日本歯科医師会の学術研修・生涯研修の対象となっているものを中心に、記させて頂いております。)
サイトポリシー・更新履歴
平成20年の夏、開業して20年を過ぎ、年齢も50歳を超えたこともあって、トップクラスにあると自負しておりますコーヌステレスコープの技術やノウハウを紹介させていただきたくて、ホームページを作ることを思い立ちました。 そのときに目指したのは、『分かっていただきやすさ』です。
ホームページ業者さんが作られるような華麗なサイトにも魅力を感じたのですが、(株)日本経営グループ、メディキャスト(株)の河村様というホームページ作りのプロの方から、『技術力を前面に押し出したいのなら、その技術を熟知している自分自身で作るべきだ』との助言をいただいて、自分で作ることにいたしました。 中高年の方にも見ていただきやすいように、文字を大きくして、専門用語はなるべく使わず、どうしても使わなければならないときは、解説をつけることにして、作り始めました。 『見ていただきやすく、分かっていただきやすく、使っていただきやすく』
もともとコンピューターは得意だったので、2~3カ月で一通り完成しましたが、『華麗さ』とはかけ離れたものになってしまいました。
しかし、ホームページの本質が情報伝達である以上、これはこれで止むを得ないのかな、と思っておりました。
平成21年9月に、コーヌスと同等の高いレベルにあると思っております『動的機能印象法による総義歯』をはじめ、『磁性アタッチメント』『よく噛める歯の形・スピルウェイ』のページを追加したことで、歯科医院の総合的なサイトとしての形がようやく整いました。
さらにその後、平成24年の夏に、『歯科難症例治療システムとしてのコーヌステレスコープ』の『概略編』『詳細編』というコーヌス技術の真髄を書き表したページを追加いたしました。
しかしその時点で、最初にホームページを作ってから4年の年月が経過し、ネット環境は激変していました。 最初はWindowsXPとインターネットエクスプローラーをターゲットにしていれば、100%近くをカバーできたのですが、AndroidやiOSなどのタブレットやスマホが多くなってくると、それらすべてのデバイスで当院のホームページを正常に閲覧することは難しくなっていました。
そこで、河村様のホームページ制作のプロとしてのお力を借りることにし、平成24年の秋に、記載内容はそのままで、すべてのデバイスに対応できるよう、デザインも含めたリニューアルをしていただきました。それに伴い、約1年かけて、動画もYoutube化いたしました。
平成26年5月、『講演・学会発表』ページを新たに追加し、当面は大規模な改修はないだろうと思っておりますが、『学会レポート』や『講演・学会発表』は、こまめに追加させていただきたいと思っております。 当院のホームページがここまで充実してまいりましたのも、河村様のプロとしての適切なアドバイスと技術力によるものと、いつも感謝いたしております。この場をお借りいたしまして、厚く御礼申し上げます。
……と、上記のようなことで、
今後も、できるだけ内容を充実させていくつもりですが、これまでにも、患者様からご指摘やご批評をいただいて、修正させていただいたところはたくさんございます。これからも、『見ていただきやすく、分かっていただきやすく、使っていただきやすく』するための改良に、労力を惜しむつもりはございません。 もし、分かりにくい表現や修正した方がいいところ、追加した方がいい事項等がございましたら、ぜひご指摘下さいますよう、お願い申し上げます。