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第22回日本歯科医学会総会

平成24年11月9日(金)~11日(日)まで、大阪国際会議場で開催されました第22回日本歯科医学会総会に参加してまいりました。
9日は講演数も少なく、また診療を休めなかったことから、10日と11日のみの参加となりました。  いつもの通り、抄録集の中からあらかじめピックアップしておいたご講演について、興味深く学ばせていただくことができました。
まず印象に残ったのが、東京大学社会予防疫学の佐々木智先生の『「噛む、食べる」という行動と健康―歯科疫学と栄養疫学との視点から―』というご講演でした。
ビタミンCやビタミンE、カロテノイド類といった栄養素の血中濃度が歯周病の発生に有意に関連していることが日米両国から報告されている事実や、噛む力の強い人との肥満度との関連、さらにはそれらから導き出される『栄養疫学』については、私がかねてから感じていた歯周病治療に対する疑問を後押ししてくれるものとなりました。  すなわち、現在の歯周病の治療は、もっぱらプラークや歯石除去の視点から語られることが多い中で、つまり原因論からのみ議論されていることが多い中で、宿主側の因子、つまり患者様の体の状態がかなり大きく影響しているのではないかといった私の考えに非常に近いものがありました。
歯周病の原因が細菌によるものであることは明らかであるにしても、それによる炎症は宿主側の免疫力との兼ね合いで起きることは基礎医学的な常識であり、体内常在菌としての口腔内細菌を完全に排除できないことが明らかである以上、宿主側の抵抗力・免疫力を考慮に入れていないことは、歯周病を一側面からしか見ていないに過ぎないと思っております。
宿主因子の関与については、実はさまざまな方面から指摘されているのですが、どういうわけか、歯周病の専門家の先生方は、原因論にのみ目を奪われておられているようで、遺伝的要素・栄養学的要素を含めた宿主側の因子との絡みで捉えていかないことには、『歯だけを見て、人を診ていない』といった批判が出てくる可能性がさらに高まってくるのではないかと感じました。
次に大変おもしろく思ったのが、『口が開かない! 診断・治療の最前線』と題された開口障害に関するシンポジウムでした。  10年ほど前までの、咬合調整やスプリント主体の顎関節症治療論は、完全に過去のものとなり、顎関節症自体の概念が大きく変化してきた中で、やはり難治性の顎関節症が存在していることも確かなことで、それに対する考え方もさまざまに違うものだなぁと感じました。
将来的には、顎関節症自体の病態解明がますます進んで行くであろう中で、こういった開口障害の原因論や治療論ももっと整備されていくことはほぼ確実で、その時には、このシンポジウムで問題にされた開口障害は、顎関節症の一症状といった概念から離れて、顎関節症とは別の疾患と捉えられる可能性が高いと感じました。 あるいは、顎関節症という疾患自体がさらに解明されて、いくつもの病態の総称でしかなかったと考えられる時代が来るのではないかとさえ感じました。
久々に大阪で開かれた日本歯科医学会総会は、今後の歯科医療の1つの方向性を見せてくれた学会として、今後も強く印象に残るような気がしています。

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