日本学術会議歯科委員会主催 『シンポジウム 健康長寿と再生医療』
平成27年12月13日(日)に、東京の市ヶ谷にある日本歯科医師会館で開催されました『シンポジウム 健康長寿と再生医療』の講演会に参加してまいりました。
このシンポジウムは、日本学術会議歯科委員会が主催で、日本歯科医学会、日本歯学系学会協議会の共催ということで、これまでこの三者が共催したことはなく、初の試みということでしたが、数多くの大学や研究機関の研究者が参加して、活発な議論が交わされました。
『再生医療』という言葉が示す通り、いま流行りのiPS細胞を使って、歯や歯周組織、さらには歯髄の再生まで目指そうというもので、まだ数十例しか成功していない、まさに近未来の歯科医療の可能性を勉強させて頂きました。
歯や歯周組織は、iPS細胞ができる前から、他の幹細胞を使っての再生療法の研究がされていたことを知っていましたので、『iPS細胞でやり易くなって弾みがついただろうな』という程度の印象でしたが、これまで再生不可能とされていた歯髄組織まで再生できたという実験結果を見せて頂いたことは、大きな驚きをもって受け止めました。
歯髄の再生は、まさにiPS細胞がなければできなかっただろうと思いますので、画期的な研究だろうと思います。
しかしこのシンポジウムでもやはり、『若い健康な状態をいかに維持するか』ということに主眼が置かれていて、私が常々考えている『初老期から終末期に向かって、口腔機能をできるだけ維持しながら、いかにして無難に軟着陸させていくか』といった議論は、まったくなされませんでした。 『不老不死』が現実になるならば、それが最良に違いありませんが、実際には、老化による生物としての衰えと終末期は必ずやってまいります。以前よりもお年寄りが健康になったとは言われていても、それは衰えと終末期が十年から二十年ほど先送りされただけであって、むしろ衰えから終末に至る期間は昔よりも長くなっています。
そこの部分をいかにしてクリアするかの歯科医療を考えておかないと、軟着陸どころか、行き着くところまで行っての硬着陸(ハードランディング)しか残されていないということになります。それでは歯科医療として、大切な部分に目をつぶっているだけ、見ないようにしていただけ、と言われても仕方ないように、私には思えるのですが……。